夫婦で購入した不動産をどうするかという点は、離婚後における大きな課題です。
一般的には、離婚時に家を売却し、その売却代金を夫婦で分け合うという選択が取られます。しかし、売却するにしても、「いつ?」「どうやって?」「いくらで売れるの?」「ローンは?」「税金は?」など、次から次へと疑問や不安が湧いてくるのではないでしょうか。
この記事では、離婚時の不動産売却に関する基本的な知識から、具体的な売却の流れ、注意すべき点、さらには住宅ローンや税金の問題まで解説します。離婚時の不動産売却に関する不安を解消し、円満な解決への第一歩を踏み出すためにお役立てください。
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目次
離婚と不動産、まず何から考えるべき?
【ケース別】離婚時に不動産を売却すべき?
初めに、不動産売却が適したケースとそうでないケースを紹介します。
自分がどちらに当てはまるか、売却を検討するかどうかの参考にしてください。
売却を検討した方が良いケース

- 住宅ローンの返済が困難な場合
返済負担の軽減や連帯保証問題を解消できます。 - 夫婦ともに居住を希望しない場合:
公平に財産分与を行い、家の維持費や管理の手間をなくすことができます。 - 早期に現金が必要な場合
新生活の資金や弁護士費用など、まとまった現金確保に有効です。 - 家が共有名義の場合
共有名義のままでは、将来的に売却などに出す際に双方の合意が必要です。
手続きが煩雑になったり、トラブルの原因になったりする可能性があります。 - 家以外に分ける資産がない場合
売却後に得た現金を財産分与することで、公平に分配できます。
売却しなくても良いケース

- 一方が居住を希望する場合
子供の生活環境の維持を優先し、一方が相手の持分を買い取るなどの選択肢があります。不動産の名義変更が必要になる場合もあります。 - 住宅ローンを完済している場合
既に住宅ローンを完済している、そもそもローンを組んでいない場合、家を残す判断も可能です。 - 無理なくローン返済が可能な場合
住み続ける側が維持費を含めて経済的に問題なく所有し続けられる場合は、売却の必要性は低くなります。 - 家を賃貸に出したい場合
夫婦が住まずとも、賃貸に出して一方や両方が収益を得る方法もあります。
不動産会社に所有している物件が賃貸に出せるかを相談してみましょう。
【重要】財産分与とは?対象となる財産・ならない財産

離婚時の不動産の扱いを考える上で、「財産分与」の基本的なルールを理解しておくことは非常に重要です。
財産分与とは
婚姻中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚時に公平に分け合う制度です。原則として夫婦それぞれ2分の1ずつですが、合意により変更可能です。
対象となる財産(共有財産)
婚姻中に夫婦の協力で得た財産は、名義を問わず共有財産とみなされます。例えば、不動産、預貯金、有価証券、自動車、保険解約返戻金、退職金などです。夫の収入で購入したマイホームも、妻の家事育児による貢献があれば共有財産となります。
対象とならない財産(特有財産)
夫婦の協力とは無関係な個人の財産は「特有財産」とされ、対象外です。例としては、結婚前の預貯金や不動産、相続・贈与で得た財産などが挙げられます。
離婚時は財産をリストアップし、共有財産と特有財産を明確に分けることが公平な財産分与の第一歩です。
【基本知識】離婚時の不動産売却で押さえるべき3つのポイント

不動産売却前に確認すべき3つの重要ポイントがあります。これらを怠るとトラブルや手続き遅延の恐れがあるため、事前に確認しておきましょう。
ポイント1:不動産の名義を確認しよう
最も重要なのは不動産の名義人確認です。
原則として不動産を売却できるのは名義人のみとなっています。
たとえ婚姻中に夫婦で協力して購入した共有財産であっても、夫名義の不動産を妻が勝手に売却することはできず、逆も同様です。夫婦共有名義なら双方の同意と協力が必要になります。
名義人の確認方法
不動産の名義人は、以下の書類で確認できます。
- 登記済権利証(または登記識別情報通知書)
不動産を取得した際に法務局から発行される書類です。 - 登記事項証明書(登記簿謄本)
法務局で取得できる公的な証明書です。「権利部(甲区)」の欄に所有者の氏名・住所が記載されています。
手元に書類がない場合でも、法務局の窓口や郵送、またはオンラインの「登記情報提供サービス」を利用して登記事項証明書を取得すれば確認できます。
オンラインサービスは手数料331円 (※2025年時点)がかかりますが、比較的安価でスピーディーに確認できます。
固定資産税の納税通知書に記載されている「土地の所在・地番」や「家屋番号」の情報が必要になります。
売却活動開始前に名義人を確認し、複数いる場合は全員の協力を取り付けましょう。
参考記事:【プロ監修】不動産売却の必要書類一覧|取得方法や費用まで徹底解説
ポイント2:売却のタイミング(離婚前後のメリット・デメリット)
不動産売却は離婚届提出の前後どちらでも可能ですが、それぞれメリットとデメリットがあります。
離婚前に売却するケース
メリット
・離婚協議と並行して進められるため、離婚後のトラブルを避けやすい。
・離婚後に元配偶者と連絡を取る必要がなくなる。
デメリット
・売却代金を離婚前に分けると贈与税がかかるリスクがある(後述)。
・精神的に不安定な中での活動となる場合も。
・好条件での売却契約成立を待ちづらい。
離婚後に売却するケース
メリット
・売却代金の分配が明確に「財産分与」とみなされやすい。
・売却活動に集中することができ、高値での売却が成功しやすくなる。
デメリット
・離婚後に元配偶者との連絡や協力が必要になり、負担に感じる場合も。
・共有名義の場合、手続きが煩雑になることも。
・財産分与の請求期限(離婚後2年)を意識する必要がある。
参考記事:【プロ監修】不動産売却のタイミングとは?市場・税金や控除・相続や生前贈与
税金面の注意点
離婚前に売却代金を分けると「贈与」と見なされ贈与税が課される可能性があります。離婚成立後の分配なら原則「財産分与」として贈与税はかかりません(例外あり)。
このリスク回避のため、「離婚前に売却活動を開始し売買契約まで進め、離婚成立後に決済・代金分配を行う」方法も多いですが、買主や金融機関との調整が必要なため不動産会社に相談しましょう。
ポイント3:別居している場合の注意点
既に別居している場合、財産分与の基準時は「別居開始時点まで」の共有財産とされます。別居後に一方の収入で購入した不動産は原則として対象外です。
同居中に購入した家のローンを別居後も一方が支払っている場合、「別居開始時点のローン残高」を基準に財産分与を計算し、別居後の返済分は別途清算となることがあります。
別居期間が長い場合は共有財産の範囲や評価が複雑になるため、早めに専門家へ相談しましょう。
ステップで解説!離婚時の不動産売却の流れ

不動産の売却を決めたら、具体的にどのような手順で進めていけば良いのでしょうか。
ここでは、離婚時の不動産売却における一般的な流れをステップごとに解説します。
全体の流れを把握することで、見通しが立ち、不安も軽減されるはずです。
(※以下の流れは一般的なものであり、個別の状況によって順番が前後したり、追加の手続きが必要になったりする場合があります。

Step1: 情報収集と比較検討(相場を知る、不動産会社を探す)
まずは、売却したい不動産がいくらくらいで売れそうか、相場を把握することから始めましょう。インターネットの不動産ポータルサイトで近隣の類似物件の売出価格を調べたり、不動産会社が提供している簡易査定(机上査定)サービスを利用したりする方法があります。
同時に、売却を依頼する不動産会社を探し始めます。離婚というデリケートな事情を理解し、親身に対応してくれる会社を選ぶことが重要です。会社の規模だけでなく、担当者の人柄、地域での取引実績なども考慮しましょう。
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Step2: 不動産査定の依頼(査定額の見方と会社選びのコツ)
相場観を掴んだら、信頼できそうな不動産会社数社に訪問査定を依頼します。訪問査定では、実際に物件の状態を確認してもらい、より正確な査定価格を出してもらいます。
査定額の見方と注意点
査定価格はあくまで「このくらいの価格で売れる可能性が高い」という目安であり、売却価格を保証するものではありません。査定価格を提示された際は、査定額の根拠を必ず確認しましょう。またなぜその価格になったのか、周辺の取引事例や物件の評価ポイントなどを具体的に説明してくれる会社を選びましょう。
会社選びのコツ
- 離婚案件の取り扱い経験
離婚に伴う不動産売却特有の注意点(財産分与、共有名義、ローンの問題など)に詳しいか確認しましょう。 - 販売力・提案力
地域での販売実績は豊富か、どのような販売活動(広告、ネットワークなど)を行ってくれるか。仲介だけでなく、買取やリースバックなど、状況に応じた最適な売却方法を提案してくれるか。 - 担当者との相性
親身になって相談に乗ってくれるか、説明は分かりやすいか、連絡はスムーズかなど、信頼できる担当者かどうかも重要なポイントです。
参考記事:【プロ監修】不動産売却|不動産会社の選び方・見極め方のポイント
Step3: 媒介契約の締結
売却を依頼する不動産会社が決まったら、媒介契約を結びます。媒介契約には以下の3種類があり、それぞれの特徴を理解して選びましょう。
- 専属専任媒介契約
1社にのみ売却を依頼し、自分で買主を見つけること(自己発見取引)もできません。不動産会社は積極的に販売活動を行い、依頼者への報告義務も最も重くなります。 - 専任媒介契約
1社にのみ売却を依頼しますが、自己発見取引は可能です。専属専任媒介契約よりは報告義務などが緩やかになります。 - 一般媒介契約
複数の不動産会社に同時に売却を依頼でき、自己発見取引も可能です。広く買主を探せますが、不動産会社の販売活動への熱意が分散する可能性もあります。
| 特徴 | 専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 |
| 依頼できる業者数 | 1社のみ | 1社のみ | 複数社可能 |
| 自己発見取引 (自分で買主を見つける) | 不可 | 可能 | 可能 |
| 売主への業務状況報告義務 | 義務あり (1週間に1回以上) | 義務あり(2週間に1回以上) | 義務なし(報告は任意) |
| 契約の有効期間(上限) | 3か月 | 3か月 | 制限なし(※通常3か月以内で設定) |
離婚案件の場合、夫婦間での連絡調整などを考慮し、窓口を一本化できる専任媒介(または専属専任媒介)が選ばれることも多いですが、状況に応じて不動産会社と相談して決めましょう。
Step4: 売却活動の開始〜売買契約
媒介契約を結んだら、いよいよ売却活動がスタートします。不動産会社は、インターネット広告、チラシ、オープンハウスなどを活用して買主を探します。購入希望者からの内覧希望があれば、対応します。
購入希望者が見つかり、価格や条件の交渉がまとまれば、売買契約を締結します。売買契約時には、買主から手付金を受け取るのが一般的です。契約内容は非常に重要ですので、不明な点は必ず不動産会社や専門家に確認しましょう。共有名義の場合は、契約時に名義人全員の署名・捺印が必要です。
Step5: 決済・引き渡し
売買契約で定められた日時に、決済(残代金の受け取りと諸費用の支払い)と物件の引き渡しを行います。通常、買主側の住宅ローン融資実行と同時に行われることが多いです。
この決済の場で、売却代金から住宅ローン残債を一括返済し、抵当権の抹消手続きを行います。また、仲介手数料や登記費用などの諸費用も精算します。
Step6: 売却後の手続き(財産分与の実行、確定申告など)
無事に決済・引き渡しが終わったら、売却代金から諸費用を差し引いた残額を、事前に取り決めた割合で財産分与として分け合います。
また、不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合は、翌年に確定申告を行い、譲渡所得税を納付する必要があります。損失が出た場合でも、他の所得と損益通算できるなどの特例が使える場合があるので、確定申告が必要になることがあります。
参考記事:
あなたに合う方法は?4つの不動産売却方法を比較解説

不動産を売却すると決めても、その方法にはいくつかの種類があります。それぞれの特徴、メリット・デメリットを理解し、ご自身の状況(売却希望時期、価格、プライバシーへの配慮など)に合わせて最適な方法を選ぶことが重要です。ここでは主な3つの売却方法を紹介します。
一般的な「仲介」:時間はかかるが高く売れる可能性
仲介とは、不動産会社に依頼して、一般の市場で買主を探してもらう最も一般的な売却方法です。

- メリット
市場価格に基づいた価格設定が可能で、比較的高値で売却できる可能性があります。広く買主を探すため、条件に合う買主が見つかりやすいです。 - デメリット
買主が見つかるまでに時間がかかることがあります(通常3ヶ月〜半年程度、場合によってはそれ以上)。内覧対応など、売却活動への協力が必要です。売却活動がオープンになるため、近所などに売却を知られる可能性があります。
最終的に売買が成立した場合、不動産会社へ仲介手数料を支払う必要があります。
「少し時間がかかっても、できるだけ高く売りたい」という場合に適した方法です。
スピーディーな「買取」:早く現金化したい場合に
買取とは、不動産会社自身が直接、物件を買い取る方法です。

買主を探す必要がないため、仲介手数料がかからず、売却までのスピードが非常に速いのが大きなメリットです(最短1週間〜数週間で現金化も可能)。
また広告やインターネットに掲載せずに売却できるため、ご近所や知人に知られにくいというメリットもあります。
現状のまま(リフォームなど不要)で買い取ってもらえるケースも多いです。

一方で不動産会社は再販を目的として買い取るため、売却価格は仲介の場合の市場価格より低くなるのが一般的です。
「とにかく早く現金化したい」「周囲に知られずに売却したい」「手間をかけたくない」という場合に有効な選択肢です。
住み続けられる「リースバック」:環境を変えたくない場合に
リースバックとは、自宅を不動産会社や投資家に売却し、その後、買主との間で賃貸契約を結ぶことで、売却後も同じ家に住み続けることができる仕組みです。

- メリット
売却代金を受け取りつつ、住み慣れた家での生活を継続できます(引っ越し不要)。特にお子様の学区を変えたくない場合などに有効です。所有者ではなくなるため、固定資産税の支払いや、通常の経年劣化に伴う修繕費の負担がなくなります。 - デメリット
売却価格は市場価格より低くなる傾向があります。毎月家賃を支払う必要があります。将来的に家賃が上昇するリスクや、賃貸契約の更新ができないリスクも考慮する必要があります。
「まとまった資金は必要だが、今の家に住み続けたい」という場合に検討できる方法です。ただし、長期的な家賃負担と売却価格のバランスを慎重に検討する必要があります。
ローンが残る場合の「任意売却」:競売を避けるために
任意売却とは、住宅ローンが残っており、家を売却してもローンを完済できない(オーバーローン)場合に、ローンを借りている金融機関の同意を得て、市場で不動産を売却する方法です。
債権者(金融機関)との合意のもとで進めるため、強制的に市場より安値で売却される「競売」を回避できる点がメリットです。競売よりも高値で売却できる可能性があり、結果的に残債務を圧縮できる場合があります。
デメリットとしては、必ず金融機関の同意が必要です。売却代金はローンの返済に充てられるため、手元にお金が残ることは基本的にありません(引っ越し費用などが認められる場合もあり)。売却後もローンが残るため、その支払い方法について金融機関と協議する必要があります。信用情報機関に事故情報として登録される可能性があり、将来的なローン審査などに影響が出ることもあります。
任意売却は、通常の売却とは手続きや交渉が複雑になるため、任意売却の経験が豊富な不動産会社や弁護士などの専門家に相談することが不可欠です。
住宅ローンが残っていても売却できる?ケース別対処法

離婚時に家を売却する上で、多くの方が頭を悩ませるのが住宅ローンの問題です。「まだローンがたくさん残っているけど、売却できるのだろうか?」という不安は、非常に切実なものでしょう。ここでは、住宅ローンが残っている場合の基本的な考え方と対処法を解説します。
まずはローン残高と不動産価値を確認(アンダーローン/オーバーローンとは)
住宅ローンが残っている不動産を売却できるかどうかを判断する上で最も重要なのは、「住宅ローンの残高」と「不動産の売却予想価格」を比較することです。
- 住宅ローンの残高を確認する
まずは、現時点で住宅ローンがいくら残っているのかを正確に把握しましょう。
毎年金融機関から送られてくる「残高証明書」や「返済予定表」を確認するか、直接金融機関に問い合わせるのが確実です。繰り上げ返済などをしている場合、当初の予定表と実際の残高が異なっていることがあります。同時に、ローンの名義人(誰が借りているか)、連帯保証人や連帯債務者(もしいる場合)についても必ず確認しておきましょう。 - 不動産の売却予想価格を調べる
前述の通り、不動産会社に査定を依頼するなどして、現実的な売却価格の目安を把握します。
この2つの金額を比較することで、ご自身の状況が以下のどちらに該当するか分かります。
- アンダーローン:不動産の売却予想価格 > 住宅ローン残高
この場合は、家を売却した代金で住宅ローンを全額返済できるため、通常の売却手続きが可能です。売却代金からローン残債と諸費用を差し引いた残りが手元に残り、これを財産分与の対象とします。 - オーバーローン:不動産の売却予想価格 < 住宅ローン残高
この場合は、家を売却しても住宅ローンを全額返済できません。

通常、金融機関はローンを完済しない限り、不動産に設定されている抵当権を抹消してくれません。抵当権が付いたままの不動産を買う人はまずいないため、原則としてそのままでは売却できません。
オーバーローンの場合の選択肢と注意点
オーバーローンの場合、売却するにはいくつかの選択肢と注意点があります。
- 自己資金で不足分を補填する
売却代金で足りないローン残高分を、預貯金などの自己資金で一括返済できれば、抵当権を抹消でき、売却が可能になります。 - 任意売却を検討する
自己資金での補填が難しい場合、前述の「任意売却」を検討します。金融機関の同意を得て市場で売却し、売却代金を返済に充て、残ったローンについては金融機関と支払い方法を協議します。 - 売却を諦め、他の方法を検討する
上記のいずれも難しい場合は、売却を諦め、「どちらかが住み続ける(ローンも支払い続ける)」「賃貸に出す(ただし金融機関の許可が必要な場合あり)」といった他の選択肢を検討することになります。
オーバーローンの場合は、状況が複雑になりがちですので、早めに金融機関や不動産会社、必要であれば弁護士に相談することが重要です。
ローン名義変更や連帯保証の扱いについて
離婚後、どちらか一方が家に住み続ける場合、住宅ローンの名義や連帯保証人の問題をクリアにする必要があります。
ローン名義の変更
夫名義のローンで、離婚後は妻が家に住み続ける場合、理想はローン名義も妻に変更することですが、妻の収入状況などによっては金融機関が認めないケースが多いです。
連帯保証人・連帯債務者
夫婦の一方が主債務者、もう一方が連帯保証人(または夫婦で連帯債務者)となっている場合、離婚してもその関係は自動的には解消されません。連帯保証人・連帯債務者を抜けたい場合は、代わりの保証人を立てるか、ローンの借り換えなどを金融機関と交渉する必要があります。
これらの問題を放置すると、離婚後も元パートナーのローン返済状況に影響を受けたり、最悪の場合、支払い義務を負わされたりするリスクがあります。必ず離婚協議の段階で取り決めを行い、金融機関に相談しましょう。
金融機関への相談は必須!早めに確認すべきこと
住宅ローンが絡む場合は、どのような選択をするにしても、必ずローンを借りている金融機関に早めに相談することが重要です。
- 売却する場合:ローン残高の正確な把握、完済手続き、抵当権抹消手続きについて確認。
- オーバーローンの場合:任意売却の可能性や条件について相談。
- 住み続ける場合:名義変更や連帯保証人解除の可能性、条件変更について相談。
金融機関の担当者に正直に状況を説明し、可能な手続きや必要な書類などを確認しましょう。
知らないと損!離婚・不動産売却にかかる税金

離婚時の不動産売却では、予期せぬ税金や利用できる控除があります。知識不足で手元に残るお金が減らぬよう、基本を押さえましょう。
(※税法は改正されることがあり、個別の状況で適用が異なります。正確な情報は税務署や税理士にご確認ください。)
不動産売却で利益が出たら「譲渡所得税」
不動産を購入時より高く売却できた場合、利益(譲渡所得)に所得税と住民税(譲渡所得税)がかかります。

譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)
取得費は購入代金や手数料等、譲渡費用は売却時の仲介手数料等です。
税率は所有期間で異なり、5年超(長期譲渡所得:約20%)か5年以下(短期譲渡所得:約39%)かで大きく変わるため、売却タイミング検討の重要要素です。
利用できる特例は?「3000万円特別控除」など

マイホーム売却時、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる「居住用財産の譲渡所得の特別控除(3,000万円特別控除)」があります。譲渡所得3,000万円以下なら譲渡所得税はかかりません。
主な適用要件は、自分が住んでいる家(または住まなくなって3年目の年末まで)の売却、前年・前々年に同特例等を受けていない、親子・夫婦間以外の売却などです。
離婚時、財産分与として元配偶者に譲渡した場合は原則適用外です。夫婦共有名義なら、各々が要件を満たせばそれぞれ控除を受けられる可能性があります(合計最大6,000万円)。
所有期間10年超の軽減税率特例などもあるため、適用可否を不動産会社や税理士に確認しましょう。
財産分与でも「贈与税」がかかるケースとは?
離婚に伴う相当な範囲の財産分与には原則贈与税はかかりません。しかし、分与額が過当な場合や、贈与税・相続税逃れのための離婚と認められる場合は課税の可能性があります。通常の離婚に伴う財産分与であれば過度な心配は不要ですが、分与額が大きい場合は注意が必要です。
その他諸費用(印紙税、登録免許税など)
不動産売却時には、譲渡所得税以外にも以下のような費用がかかります。
- 印紙税: 売買契約書に貼る収入印紙代。契約金額によって異なります。
- 登録免許税: ローン完済に伴う抵当権抹消登記などに必要です。(通常は売主負担)
- 仲介手数料: 不動産会社に仲介を依頼した場合に支払う成功報酬。(売買価格に応じて上限あり)
- その他:測量費、解体費(更地にする場合)、ハウスクリーニング代など。
これらの諸費用も考慮して、売却計画を立てることが重要です。
参考記事:
不動産売却の費用一覧|空き家・リースバック・資産運用などの資産活用法
【要注意】離婚時の不動産売却トラブルと回避策

離婚時の不動産売却は精神的負担が大きくトラブルも起こり得ます。事前想定と対策で円満解決を目指しましょう。
財産分与で揉めないための「公正証書」の活用
離婚協議で不動産売却や財産分与について合意したら、必ず書面に残すことが重要です。口約束だけでは後のトラブルの原因になる可能性もあるためです。
書類としては「離婚協議書」が一般的ですが、より強い効力を持つ「公正証書」の作成をおすすめします。

公正証書とは?
公証役場で公証人が作成する公文書です。作成には費用と手間がかかりますが、以下のようなメリットがあります。
- 高い証明力
公文書であるため、合意内容の存在や真正さについて強い証拠となります。 - 執行力(強制執行認諾文言付きの場合):
養育費や財産分与の金銭支払いなどの約束が守られなかった場合に、裁判所の判決などを待たずに、直ちに相手の給与や財産を差し押さえる強制執行の手続きが可能になります。(※公正証書に「強制執行認諾文言」を入れる必要があります)
不動産の売却代金の分配方法、時期、ローン残債の清算方法などを公正証書に明記しておくことで、将来的な金銭トラブルを効果的に防止できます。
財産分与の請求期限は離婚後2年以内
財産分与の請求には期限があります。離婚時に財産分与の取り決めがなくても、離婚から2年以内なら請求可能です。しかし、この期間を過ぎると原則として請求権を失います(除斥期間)。
不動産のように評価や手続きに時間がかかる財産が含まれる場合は特に、離婚後なるべく早く、できれば離婚前に話し合い、取り決めをしておくことが望ましいです。
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円満な解決のために、まずは専門家へ

離婚に伴う不動産売却は、手続きの複雑さに加え、ローン、税金、夫婦間の感情も絡み非常にデリケートです。
この記事では基本から流れ、注意点、売却方法、ローン、税金まで網羅的に解説しましたが、これらは一般知識であり、最適な解決策は個々の状況で異なります。
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| 監修者 海沼 仁(カイヌマ ヒロシ) ウスイホーム株式会社 代表取締役社長 【経歴】 大学時代は不動産評価論を専攻。 卒業後、1997年にウスイホーム株式会社入社。売買仲介部門の新人賞を受賞。 2001年、新店の上大岡店店長に就任。以降、各店店長を歴任。特に新店舗の立ち上げを得意とし、後にエリアマネージャーに抜擢される。 2012年より取締役に就任。主に横浜、湘南エリアでの商圏拡大に尽力している。 2021年には創業45周年を機に、SDGs推進に取り組む「ウスイグループSDGs宣言」を制定。地域貢献活動にも力を入れている。 2025年4月、ウスイホーム株式会社代表取締役社長に就任。 地域密着型営業で築き上げてきた不動産業界のキャリアと実績から、顧客の信頼も厚く、幅広い人脈を持つ。著名人・有名人からの相談や紹介も多い。 【資格】 宅地建物取引士 CPM(米国不動産経営管理士) 日本RSP協会 不動産仲介士 試験問題監修委員 |
| 執筆者 ウスイホーム株式会社 広報チーム 1976年に神奈川県で創業。お客様と地域の発展のため、横浜・湘南・横須賀エリアで不動産売却のお手伝いをさせて頂いております。長年にわたり蓄積してきた知見を活かし、不動産売却を検討する際に役立つ情報を発信しています。 お問い合わせURL https://www.usui-home.com/contact |