土地売却

【専門家監修】不動産売却の費用一覧│目安や計算方法、安く抑えるコツまで解説

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「自宅を売却すると、手元にいくら残るのだろう?」

不動産売却を検討する際、こんな疑問を抱く方は多いのではないでしょうか。

売却で得たお金はすべて手に入るわけではなく、仲介手数料などの様々な費用が差し引かれます。

この費用を正確に把握しないまま計画を進めると、「新居の購入資金が足りない…」「思ったより手残りが少なかった…」といった事態に陥りかねません。

この記事では、不動産売却の専門家監修のもと、売却にかかる費用について徹底的に解説します。必要な費用が明確になり、安心して売却活動の第一歩を踏み出すための道しるべとしてお役立てください。

不動産売却にかかる主な費用一覧

不動産売却には、大きく分けて「仲介手数料」「税金」「その他諸費用」の3種類の費用がかかります。一般的に、これらの費用合計額の目安は売却価格の3%~4%程度と言われています。

まずは、どのような費用があるのか、その全体像を把握することから始めましょう。

【一覧】不動産売却の費用・支払いタイミング・方法

■不動産売却で必要な基本費用

費用項目費用の目安支払いタイミング
仲介手数料売却価格の3%+6万円+消費税契約時と決済時
印紙税1万円(売却益1,000万円超5,000万以下)契約時
登記費用(抵当券抹消費用・司法書士依頼費用)抵当権抹消費用:1件につき1,000円
司法書士依頼費用:1万~5万円
決済時
ローン返済関連費用無料~5万円+ローン残債決済時
譲渡所得税・住民税利益(譲渡所得)の約20%~39%売却翌年の確定申告時
引越し費用5万円~30万円引越し時に支払い

■売却する不動産・状況に応じて必要な費用

土地の測量費用40万円~80万円売却活動準備時
建物の解体費用120万円~売却活動準備時
地中埋設物の撤去費用数万円~100万円以上売却前~決済時
ハウスクリーニング費用5万円~30万円売却活動準備時
リフォーム費用30万円~売却活動準備時
各種書類の発行費用1通数百円~後述の項目を参照

以下では、これらの各費用について、一つひとつ詳しく解説していきます。

仲介手数料

仲介手数料は、不動産の売却を仲介してくれた不動産会社に支払う成功報酬です。
不動産売却の費用の中で、最も大きな割合を占めることが多く、その上限額は宅地建物取引業法で定められています。

  • 200万円以下の場合は「売却価格×5%+消費税10%」
  • 400万円以下の場合は「売却価格×4%+2万円+消費税10%」
  • 400万円を超える場合は「売却価格×3%+6万円+消費税10%」

このように仲介手数料は売却価格によって、掛ける割合が異なります。
売却価格が3,000万円の不動産を例に計算してみると、以下のようになります。

計算例:(3,000万円×3%+6万円)+消費税10%=1,056,000円 

仲介手数料の早見表

売却価格仲介手数料(税込)
500万231,000円
1,000万396,000円
2,000万726,000円
3,000万1,056,000円 
4,000万1,386,000円
5,000万1,716,000円

仲介手数料は売買契約時に半金を支払い、引き渡し当日に残り半分を支払うのが一般的です。

低価格な不動産(空き家等)の仲介手数料特例

地方の空き家など売却価格が低い不動産の取引では、従来の計算式では仲介手数料が少額になるため、不動産会社が敬遠しがちになるという問題がありました。

この問題を解消するため、2024年7月1日にルールが改正され、売却価格が800万円以下の物件では、不動産会社は最大30万円(税抜)の仲介手数料を受け取れるようになりました。

ただし、これは通常の仲介手数料に、手間のかかる現地調査などの特別な費用を上乗せできる制度です。適用するには、事前に売主への説明と合意が必須となります。

もしこの手数料を提示された場合は、その根拠や内訳について、遠慮なく質問するようにしましょう。

印紙税

売買契約書に貼付する収入印紙代です。契約金額に応じて税額が決まり、契約時に支払います。

不動産の売買契約書は2027年3月31日まで軽減措置の対象となっており、

契約金額が「1,000万円超5,000万円以下」の場合、印紙税は10,000円です。

印紙税の早見表

契約金額本則税率軽減税率
10万以上50万以下400円200円
50万以上100万以下1,000円500円
100万以上500万以下2,000円1,000円
500万以上1千万以下10,000円5,000円
1千万以上5千万以下2,0000円10,000円
5千万以上1億以下60,000円30,000円
1億以上5億以下100,000円60,000円

万が一収入印紙を貼り忘れると、本来納付すべきだった印紙税額の3倍に相当する過怠税(かたいぜい)が課される可能性があります。税務調査などで指摘される前に、自主的に貼り忘れを申し出れば1.1倍に軽減されますが、契約時には必ず確認するようにしましょう。

登記費用(抵当権抹消費用、司法書士依頼費用)

売却する不動産に住宅ローンが残っていた場合は、清算した上で金融機関の担保権である「抵当権」を登記簿から抹消するための手続きが必要になります。

抵当権とは、金融機関がローンなどで融資を行う際に、借主の不動産を担保にする権利のことです。

買主へ完全な所有権を渡すために必須の手続きで、抵当権の抹消費用は売主が負担します。

手続きは司法書士に依頼するのが一般的で、費用は以下の合計で構成されます。

  • 登録免許税:不動産1つにつき1,000円

  • 司法書士報酬:1万円~5万円(目安)

この費用は、不動産の決済日当日に、売却代金の中から直接精算されるため、別途現金を用意する必要はありません。

住宅ローン返済費用・手数料

売却する不動産に住宅ローンが残っている場合、引き渡し日(決済日)にその全額を一括で返済し、完済する必要があります。

金融機関はローンが完済されない限り抵当権を抹消しないため、売却代金でローンを全額返済する必要があるのです。返済元金に加えて、主に以下の費用がかかります。

  • 繰り上げ返済手数料:無料~5万円(目安)

  • 未払利息: 最後の返済日から決済日までの日割り利息

これらの費用は、物件の引き渡しと残代金の受け取りを行う決済日に、受け取った売却代金の中から直接精算されるため、別途現金を用意する必要はありません。

譲渡所得税

譲渡所得税は、不動産を売却して得た利益(譲渡所得)に対して課される税金(所得税・住民税)です。売却で利益が出なかった場合は、この税金はかかりません。

譲渡所得の計算方法

譲渡所得は、以下の計算式で算出します。

> 譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)

 取得費: その不動産の購入代金や、購入時にかかった諸費用(仲介手数料、登記費用など)のことです。

 譲渡費用: 今回の売却でかかった諸費用(仲介手数料、印紙税など)のことです。

税率は、不動産の所有期間によって大きく異なります。

長期譲渡所得(所有期間5年超): 20.315%
短期譲渡所得(所有期間5年以下): 39.63%

参考記事:不動産売却でかかる税金一覧とポイント解説

引っ越し費用

不動産売却では、売却費用とは別に引っ越し費用も発生します

費用の目安は5万円~30万円程度と幅広く、主に以下の4つの要因で変動します。

荷物の量:家族構成や家財の多さ
移動距離:新居までの距離
時期:3~4月の繁忙期や土日祝日は割高
オプション:荷造りやエアコン移設などの追加作業

特に引っ越しの時期は料金への影響が大きいため、可能であれば繁忙期を避けるのが費用を抑えるコツです。

またマイホームの買い替えを行う場合には、仮住まいへの引っ越し、仮住まいから新居へと、合計2回分の引越し費用がかかる点も念頭においておきましょう。

不動産売却のその他諸費用(状況次第で必要な費用)

 境界確定・測量費用

主に土地や戸建ての売却で、隣地との境界が曖昧な場合に発生する費用です。
買主との安全な取引を実現し、将来的なトラブルを防ぐため、土地家屋調査士に依頼して境界を明確にします。

費用の相場は40万円~80万円が目安ですが、土地の広さ、形状、隣接地の数、官公署の立ち会い(官民査定)の有無などによって大きく変動します。

測量費は高額ですが、不動産の価値を明確にし、安全性を担保するための費用です。

売却活動を始める前に、測量の要否を不動産会社に必ず確認しましょう。

建物解体費用(廃材処理費用含む)

築年数がかなり経過した家を「古家付き土地」としてではなく、更地にして売却する場合に必要な費用です。
見積もりには、建物の解体費用だけでなく、そこから出る木材やコンクリートなどの廃材処理費用も含まれるのが一般的です。

構造坪単価の相場30坪の解体費用(目安)
木造4万~5万円120万~150万円
鉄骨造4万~7万円120万~210万円
RC造(鉄筋)6万~8万円180万円~240万円

解体費用は業者によって差が大きいため、必ず複数の解体業者から相見積もりを取りましょう。また、「更地にすれば必ず高く売れる」とは限りません。

解体費用をかけても、それ以上に売却価格が上がらないケースもあるため、不動産会社の担当者と慎重に検討することが重要です。

参考記事:戸建て解体費用はいくらかかる?相場・注意点・補助金まで解説

地中埋設物の撤去費用

土地を掘り起こした際に、地中から古い建物の基礎やコンクリートガラ、浄化槽、井戸といった障害物(地中埋設物)が見つかった場合、その撤去にかかる費用です。

費用相場は1平方メートルあたり12,000円からが目安ですが、埋設物の種類や量、深さによって大きく変動します。事前に予測することが難しく、想定外の費用になりがちです。

なお、売主は買主に対して、契約内容に適合した不動産を引き渡す責任(契約不適合責任)を負います。ご自身が知っている土地の過去の利用状況(以前は畑だった、井戸があったなど)は、些細なことでも必ず不動産会社に相談するようにしましょう。

ハウスクリーニング・不用品処分費用

売却物件の内覧時に購入希望者へ良い印象を与えるために発生する費用です。

必須ではありませんが、売却価格や売却期間に影響するため、重要な準備費用とされています。

  • ハウスクリーニング費用:5万円~30万円(目安)

専門業者に依頼し、キッチンや水回り、床などをプロの技術で清掃してもらう費用です。マンションであれば5万円前後、戸建てであれば7万円前後からが一般的です。清掃範囲や汚れの度合いによって変動します。

  • 不用品処分費用:数万円~30万円(目安)

室内に残された家具や家電(残置物)を処分するための費用です。買主への引き渡しは、室内を空にすることが基本となります。

専門業者に依頼する場合、処分する物の量に応じて料金が決まります。大型の家具が多いほど高額になります。

リフォーム費用

内覧時の印象を良くし、売却を有利に進めるための戦略的な費用です。必須ではありませんが、費用対効果を考えて実施します。

費用の目安は工事範囲によって大きく異なり、壁紙の張り替えやハウスクリーニングといった見た目の改善なら5万円~30万円、キッチン・浴室全体の交換など大規模なリフォームは100万円以上かかることもあります。

注意点として、かけた費用を売却価格で全額回収できることは稀で、費用倒れになるリスクが最大のデメリットです。

大規模なリフォームは避け、壊れた設備の修繕や専門家による清掃など、「マイナス点をゼロに戻す」程度の修繕に留めておくと良いでしょう。

参考:横浜・湘南・横須賀のリフォーム・リノベーション | ウスイホーム

 各種書類の発行費用

売却手続きには、本人確認や不動産情報の証明のために、役所や法務局でいくつかの公的な書類を取得する必要があります。

主な取得書類費用の目安(1通あたり)
住民票300円前後
印鑑証明書300円前後
固定資産評価証明書400円前後
登記簿謄本(登記事項証明書)600円(オンライン請求なら安価)
その他の書類含めた合計費用相場数千円程度

 一つひとつは少額ですが、必要な枚数や書類の種類は取引によって異なります。
不動産会社の担当者から、どの書類がいつまでに必要になるか、事前にリストアップしてもらうとスムーズです。

参考記事:【プロ監修】不動産売却の必要書類一覧|取得方法や費用まで徹底解説

いつ何を払う?不動産売却の費用がかかるタイミング

不動産売却の費用は、一度にまとめて支払うわけではありません。売却活動の進捗に合わせて、様々なタイミングで発生します。

いつ、どのくらいの費用が必要になるのか、その全体像とキャッシュフローを事前に把握しておくことが、安心して売却を進めるための鍵となります。

ステップ1:査定依頼~媒介契約

不動産会社に不動産の査定を依頼し、売却活動を正式に任せる「媒介契約」を結ぶまで、基本的に費用は一切かかりません。

この無料の期間を有効に活用し、複数の不動産会社から話を聞き、査定額の根拠や販売戦略を比較検討することが、成功の第一歩となります。

ステップ2:売却活動の準備

実際に不動産を売りに出す前の準備段階です。
ここで発生する費用は、不動産の価値を高め、売却を有利に進めるための「先行投資」となります。
必ずしも必須ではありませんが、不動産の状態に応じて希望する場合は、売却代金を受け取る前にお手持ちの自己資金で支払う必要があります。

  • ハウスクリーニング・不用品処分費用:5万円~30万円(目安)

買主の内覧時の印象を良くするために行います。専門業者に依頼する範囲や、処分する不用品の量によって金額は変動します。

  • 境界確定・測量費用(※主に戸建て・土地):40万円~80万円(目安)

隣地との境界が曖昧な場合に、土地家屋調査士に依頼して境界を明確にします。
高額になる可能性がありますが、安全な取引のために必須となることが多い費用です。

ステップ3:売買契約の締結

買主と売却条件が合意に至ると、売買契約を締結します。このタイミングで、以下の費用を自己資金(主に現金)で支払う必要があります。

  • 印紙税:1万円(売却価格が1,000万円超5,000万円以下の場合)

売買契約書に貼付する収入印紙代で、契約書作成時に現金で支払います。

  • 仲介手数料(半金):約53万円(3,000万円で売却した場合)

不動産会社に支払う仲介手数料(売却価格の3%+6万円+消費税)のうち、半額をこのタイミングで支払うのが一般的です。

ステップ4:不動産の引き渡し・決済

売却プロセスの中で、最も大きなお金が動く最終段階です。

この日に支払う費用は、買主から受け取る売却代金の中から直接精算されるため、別途大金を用意する必要はありません。

  • 仲介手数料(残金):約53万円(3,000万円で売却した場合)

仲介手数料の残り半額を支払います。

  • 登記費用(抵当権抹消費用・司法書士依頼費用など):1万円~5万円(目安)

住宅ローンが残っている場合に、その担保権(抵当権)を抹消するための手続き費用です。司法書士への報酬が含まれます。

  • 住宅ローン一括返済費用:無料~5万円程度 + ローン残債全額

ローンを完済するための手数料と、ローン残債の元金全額を金融機関に支払います。

ステップ5:確定申告

すべての取引が完了した後、税金に関する最後の手続きが必要になります。売却した年の翌年2月16日~3月15日の間に確定申告を行いましょう。

  • 譲渡所得税・住民税:売却利益の約20.315%~39.63%

売却によって利益が出た場合にのみ、その利益に対して課税されます。
前年に受け取った売却代金の中から納税費用を確保しておき、このタイミングで納付します。

  • 税理士への依頼費用(※必要な場合):5万円~15万円(目安)

税金の計算が複雑で、専門家である税理士に確定申告を依頼する場合に発生します。 

参考記事:【図解】不動産売却の流れを7ステップで解説!査定依頼から確定申告、期間まで紹介

【不動産種別】手取りはいくら?不動産売却費用のシミュレーション

同じ3,000万円で売却しても、物件が「戸建て」「マンション」「土地」のどれかによって、かかる費用や最終的な手取り額は異なります。

ここでは、物件種別ごとの費用内訳を詳しく算出し、手取り額がどう変わるのかをシミュレーションします。

▼シミュレーションの前提

  • 売却価格3,000万円
  • 購入時の価格(取得費): 4,000万円
  • 住宅ローン残債:1,000万円
  • 所有期間: 10年超

今回のシミュレーションでは、売却価格が購入時の価格(取得費)を下回るため、売却による利益(譲渡所得)は発生しません。したがって、どのケースでも譲渡所得税は0円となります。

ケースに応じて諸費用や金額が異なるため、目安として参考にしてください。

ケース1:戸建てを3,000万円で売却した場合

▼費用の内訳

諸費用金額の目安
仲介手数料約106万円
印紙税1万円
境界確定・測量費用約50万円
登記費用(抵当件抹消費用)約5万円
ローン一括返済手数料約3万円
諸費用合計(ローンあり)約165万円
諸費用合計(ローンなし)157万円
住宅ローン残債1,000万円
最終手取り額(ローンあり)1,835万円
最終手取り額(ローンなし)2,835万円

戸建ての売却では、土地の境界確定のための測量費用や、建物のインスペクション費用が追加でかかることがあります。

ただし、住宅ローンを完済済みであれば抵当権抹消費用やローン返済手数料は不要です。
また、土地の境界がすでに確定している場合も測量費用はかかりません。

ケース2:マンションを3000万円で売却した場合の費用

▼費用の内訳

諸費用金額の目安
仲介手数料106万円
印紙税1万円
登記費用(抵当権抹消費用)5万円
住宅ローン一括返済手数料3万円
ハウスクリーニング等5万円
諸費用合計(ローンあり)120万円
諸費用合計(ローンなし)112万円
住宅ローン残債1,000万円
最終手取り額(ローンあり)1,880万円
最終手取り額(ローンなし)2,888万円

マンションは土地の境界測量などが不要なため、3つの種別の中では最も費用の見通しが立てやすいと言えます。大きな追加費用が発生するリスクは低いですが、室内の状態が売却価格に影響します。

ハウスクリーニングや必要に応じたリフォームで、内覧時の印象を高めることが重要です。

ケース3:土地を3,000万円で売却した場合の費用

▼ 費用の内訳

費用・返済項目金額の目安
仲介手数料106万円
印紙税1万円
境界確定・測量費用50万円
登記費用(抵当権抹消費用)5万円
住宅ローン一括返済手数料3万円
古屋等の解体費用150万円
諸費用合計(ローンあり)315万円
諸費用合計(ローンなし)307万円
住宅ローン残債1,000万円
最終手取り額(ローンあり)1,685万円
最終手取り額(ローンなし)2,693万円

土地は、境界を確定させる「測量費用」が大きな割合を占めます。
また、今回のシミュレーションには含めていませんが、一見して分からない「地中埋設物」の撤去費用の発生リスクも考慮に入れる必要があります。

ご自身の不動産を売却する際は、「どの費用がかかる可能性があるのか」を、不動産会社にしっかり確認し、書面で見積もりを出してもらうことが重要です。

【状況別】特別な事情で不動産を売却する際の費用

通常の不動産売却とは別に、特別な事情を抱えているケースでは、特有の費用や注意点が存在します。

ケース1:親から相続した実家を売る場合の費用

通常の売却費用に加えて、以下の費用が発生します。

  • 相続登記費用:5万円~15万円(目安)

不動産の名義を亡くなった親からご自身(相続人)へ変更するための手続きです。売却の前提として必須となります。

  • 遺産分割協議書の作成費用:3万円~10万円(目安)

相続人が複数いる場合に、誰が不動産を相続し、売却代金をどう分けるかを記した書類です。司法書士や行政書士に作成を依頼します。

参考記事:相続した不動産をスムーズに売却!流れ・税金・注意点まで解説

ケース2:離婚で不動産の財産分与をする場合の費用

離婚に伴う売却では、費用そのものよりも、諸費用を差し引いた手取り額を夫婦間でいかに公平に分けるかが最大のテーマです。後々のトラブルを避けるため、専門家に相談する費用が発生することがあります。

  • 弁護士・司法書士への相談や依頼費用:5万円~20万円(目安)
    財産分与の割合や条件を定める「財産分与協議書」や「離婚協議書」の作成を専門家に依頼する費用です。公正証書として作成することも多くあります。

参考記事:【専門家監修】離婚時の不動産売却で後悔しない進め方|財産分与・ローン・税金まで解説

ケース3:新しい家への住み替えの場合の費用

現在の家を売却し、新しい家に住み替える場合、「売却」と「購入」が同時進行するため、資金計画とタイミングの管理が非常に重要になります。

  • 仮住まいの家賃・2回分の引っ越し費用:10万~60万(目安)

今の家を先に売却し、新居の完成まで賃貸住宅などで仮住まいする場合、その家賃や2回分の引っ越し費用が数十万円単位で発生します。

  • つなぎ融資の利息:10万円~30万円(目安)

今の家の売却代金が入る前に新居の購入代金を支払う必要がある場合、「つなぎ融資」を利用することがあります。

これは一時的な借入金であり、売却代金が入るまでの利息を支払う必要があります。

不動産売却の費用を抑える5つの方法

ここでは、不動産売却の費用を賢く、そして着実に安く抑えるための5つの具体的なコツを専門家が解説します。

複数の不動産会社に査定を依頼する

不動産売却の費用の中で最も大きな割合を占めるのが、不動産会社に支払う仲介手数料です。この費用を節約する効果的な方法が、複数の不動産会社から査定と同時に費用の見積もりを取得することです。

複数の会社から査定を取ることで、売却価格の比較はもちろん、仲介手数料の交渉の土台ができます。また、各社の販売戦略を聞くことで、より高く売ってくれる会社を見極めることにも繋がります。これにより結果的に費用の削減につながります。

特例制度を利用して費用を抑える

費用の中で最も大きな割合を占める税金は、特例制度の活用で大幅に削減できます。
特例の適用には確定申告が必須となるため、忘れずに手続きを行いましょう。

マイホーム売却なら「3,000万円特別控除」で費用を抑える

ご自身が住んでいた家や土地を売却する場合に利用したい有効な特例が「居住用財産の3,000万円特別控除」です。

売却によって得た利益(譲渡所得)から、最大3,000万円までを控除する(差し引く)ことができます。つまり、売却で得た利益が3,000万円までであれば費用はかかりません。
※3,000万円を超える部分については、別途課税されます。

「3,000万円特別控除」を受けるための主な条件

  • 自分が主として住んでいた家屋、または以前住んでいた家屋が建っていた土地であること
  • 住まなくなってから3年目の年の12月31日までに売却すること
  • 家屋を取り壊した場合は、1年以内に土地の売買契約を締結すること
  • 売却した年の前年、前々年にこの特例を利用していないこと
  • 親子や夫婦など、特別な関係の相手への売却ではないこと
  • 売却した翌年に、必ず確定申告を行うこと

不動産の所有期間の長さに関わらず利用できる点も、大きなメリットです。

長く住んだ家なら、費用負担が軽くなる「軽減税率の特例」

もし売却するマイホームの所有期間が10年を超えているなら、「所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例」も検討しましょう。

この特例を使うと、売却利益のうち6,000万円以下の部分にかかる税率が、通常の約20%から約14%にまで引き下げられます。

適用条件は「3,000万円の特別控除」と基本的には同じですが、売却した年の1月1日時点の不動産所有期間が10年超であることが求められます。

さらに、この制度の最大の魅力は、先にご紹介した「3,000万円特別控除」とあわせて利用できる点です。

もし売却利益が3,000万円を超えても、控除を適用した残りの金額に対し、さらに低い税率が適用されるため、費用を抑える上で有効な方法になります。

住み替えの場合は「買換え特例」で納税費用を先送りに

居住中の家を売却し、新しい家に買い換える際には「特定の居住用財産の買換え特例」という選択肢もあります。

これは、売却で得た利益にかかる税金の支払いを、次にその新しい家を売却する時まで先送り(繰り延べ)にできる制度です。不動産売却時にまとまった費用を用意する必要がなくなるのが大きなメリットです。一方で、3,000万円の特別控除や軽減税率の特例と併用することはできません。

買い替え特例の主な適用条件

売却する不動産に関する主な要件

  • 自分が主として住んでいた家屋(マイホーム)であること
  • 所有期間・居住期間がともに10年以上であること
  • 売却代金が一億円以下であること
  • 親子や夫婦など、特別な関係の相手への売却ではないこと
  • 購入する不動産に関する主な要件
  • 一定の期間内に購入すること
  • 購入したよく年末までに居住すること
  • 中古不動産の場合は、耐震基準を満たしていること

これまでの特徴や条件をふまえ、どの制度がご自身の資金計画にとって有利になるか、身長に判断しましょう。事前に不動産会社の担当者に確認しておくと安心です。

売却までの所有期間に注意する

不動産売却の税金は、所有期間が5年を超えるか否かで税率が約2倍(39.63%→20.315%)も変わるため、売却のタイミングが費用節約の重要なポイントです。

例:売却利益が500万円の場合

  • 所有期間が5年以下:約198万円
  • 所有期間が5年超:約101万円

所有期間は「売却した年の1月1日時点」で計算されます。

例えば、2020年8月に購入した不動産の場合、単純な5年後は2025年8月ですが、税法上の所有期間が5年超と認められるのは、2026年1月1日以降の売却となります。

売却を急がないなら、この「5年の壁」を越えてから売るのが賢明です。

その他の諸費用を見直す

仲介手数料や税金以外にも、細かな費用の積み重ねが大きな支出となります。専門家に依頼する費用の一部は、ご自身の工夫次第で節約が可能です。

  • 登記費用
    住宅ローンの抵当権抹消登記は司法書士に依頼しますが、不動産会社から紹介された司法書士にそのまま頼む必要はありません。
    ご自身で探し、複数の事務所から見積もりを取ることで、報酬部分を1〜2万円程度安くできる可能性があります。

  • ハウスクリーニング・不用品処分費用
    業者に一括で依頼すると高額になりがちです。不用品はフリマアプリや自治体のサービスを利用して処分し、清掃もご自身でできる範囲は行うようにしましょう。
    プロに頼む箇所を限定することで、数万円〜十数万円の費用を節約できます。

  • 解体費用
    庭木やフェンスなど自らで処分できる範囲は対応しましょう。
    また複数の業者から見積りを取るだけでなく、閑散期(6月~9月、1月~2月)には工事費が安く抑えられる場合があります。
    工事費用に補助金を交付している自治体もあるため、解体を検討する場合は事前に調べておくと良いでしょう。

仲介手数料の割引特典を利用する

不動産会社によっては、友人や家族へ紹介(その後契約)すること、1社に販売を任せる「専任媒介契約」を結ぶことや、売却と購入を同じ会社に依頼することで、仲介手数料を割り引く制度を設けている場合があります。

例:ウスイホームの割引特典

  • 「ウスイグループのお友達・ご家族紹介制度」
    ご友人、ご家族、お知り合いが契約された場合、ご紹介した方には紹介料のプレゼント、ご紹介された方には仲介手数料、請負額の割引。

  • 「ウスイホーム リピート特典」
    ウスイグループで不動産をご購入またはご売却、賃貸や新築、リフォームをされた方が再度ご契約いただく場合の仲介手数料、請負額の割引。

このような割引特典を利用することで、不動産売却の費用を大幅に抑えることができます。

割引特典の有無は、事前に不動産会社の公式サイトや担当者に確認するようにしましょう。

参考:ウスイホームの割引特典について詳しくはこちら

不動産売却の費用における注意点

最後に、不動産売却の費用面で「こんなはずではなかった…」と後悔しないために、特に注意すべき点を5つに絞って解説します。

売却利益が出なくても「確定申告」が必要な場合がある

不動産を売却しても利益が出ない、赤字の場合でも確定申告が必要になるケースがあります。

それが「譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を利用する場合です。

これは、マイホームの売却で出た損失を、その年の給与所得や事業所得など他の所得から差し引く(損益通算)ことで、納めすぎた所得税の還付を受けられる制度です。
さらに、その年に引ききれなかった損失は、翌年以降最大3年間繰り越して控除できます。

この特例の適用を受けるためには、損失が出た場合でも、売却の翌年に必ずご自身で確定申告を行う必要があります。
何もしなければ、戻ってくるはずだった税金が戻らず損をしてしまうことになります。

ローン残債が売却価格を上回る「オーバーローン」に注意

売却価格よりも住宅ローンの残債が多い状態を「オーバーローン」と言います。

金融機関は、ローンを完済しなければ不動産の担保権である「抵当権」を抹消してくれません。

抵当権が抹消できなければ、不動産を買主へ引き渡すことができず、売買そのものが成立しません。

したがって、オーバーローンの状態で売却を進めるためには、売却代金で足りない分を自己資金(お手持ちの現金)で補填する必要があります。

売却活動を本格的に始める前に、査定額とローン残債を正確に把握し、ご自身の資金計画で売却が可能かどうかを必ず確認しましょう。

費用の支払いは「現金」が必要なタイミングがある

不動産売却にかかる費用の多くは、最終的に受け取る売却代金の中から精算できます。
しかし、一部の費用は、それよりも前のタイミングで自己資金(現金)で支払う必要があります。

代表的なものは、売買契約時に支払う「印紙税」と「仲介手数料の半金」です。

仲介手数料の半金は、数十万円単位のまとまった金額になることがほとんどです。

現金のほか、不動産会社によっては銀行振込で支払い可能な場合があります。

決済日にすべて精算できると考えていると、契約当日に慌てることになりかねません。

事前に不動産会社に支払いタイミングを確認し、必要な費用を用意しておきましょう。

短期間での売却は費用が高くなる

売却で利益が出た場合にかかる税金の税率は、不動産の所有期間によって約2倍もの差があります。

この「所有期間」が5年以下の場合は「短期譲渡所得」とみなされ、約39%という非常に高い税率が適用されます。

一方、所有期間が5年を超えれば「長期譲渡所得」となり、税率は約20%にまで下がります。

この所有期間は「売却した年の1月1日時点」で判定されるため、あと数か月待つだけで税率が半分近くになる、というケースも起こり得ます。

売却を急ぐ特別な理由がない限り、この「5年の壁」を意識して売却タイミングを検討することが、費用を抑えるポイントになります。

参考記事:不動産売却でかかる税金一覧とポイント解説

安さだけで不動産会社を選ばない

不動産会社選びの際に、「仲介手数料が安いから」という理由だけで決めるのは非常に危険です。

売主の手残り額を最終的に決める最大の要因は、「不動産会社が持つ販売力」だからです。

例えば、仲介手数料が20万円安くても、販売力が低いために相場より100万円安く売れてしまっては、結果的に80万円も損をすることになります。

手数料の安さだけでなく、売却する不動産の地域に強いかどうか、査定価格の根拠、販売戦略、担当者の熱意や実績などを総合的に比較し、ご自身の不動産価値を最大化してくれる会社を選ぶようにしましょう。

参考記事:【プロ監修】不動産売却|不動産会社の選び方・見極め方のポイント

不動産売却ならウスイホームにご相談を

不動産売却をお考えなら、ぜひウスイホームにご相談下さい。1976年の創業以来、横須賀・湘南・横浜エリアを中心に、多くのお客様の不動産売却をサポートしてきました。

地元の特性や市場動向を熟知したプロが、お客様一人ひとりに合わせた売却プランを提案します。

費用の疑問やお悩みも、経験豊富なスタッフが丁寧にお答えいたします。

初めての方もまずはお気軽にお問い合わせください。

▼横須賀・湘南・横浜エリアで不動産売却についてのご相談はこちら▼
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不動産売却の費用で後悔しないために

不動産売却の費用について、その種類からタイミング、節約術までを網羅的に解説しました。

不動産売却の費用は複雑に見えますが、事前にその全体像と支払いタイミングを把握しておくことで、安心して取引を進めることができます。特に、仲介手数料や税金などの主要な費用は、知識と工夫次第で大きく抑えることが可能です。

後悔のない売却を実現するためには、まず信頼できる不動産会社に相談し、ご自身の不動産に合わせた正確な費用の見積もりを出してもらうことが最も重要です。

この記事で得た知識をもとに、専門家と相談しながら、最適な売却計画を立てていきましょう。

監修者 海沼 仁(カイヌマ ヒロシ)
ウスイホーム株式会社 代表取締役社長

【経歴】
大学時代は不動産評価論を専攻。
卒業後、1997年にウスイホーム株式会社入社。売買仲介部門の新人賞を受賞。
2001年、新店の上大岡店店長に就任。以降、各店店長を歴任。特に新店舗の立ち上げを得意とし、後にエリアマネージャーに抜擢される。
2012年より取締役に就任。主に横浜、湘南エリアでの商圏拡大に尽力している。
2021年には創業45周年を機に、SDGs推進に取り組む「ウスイグループSDGs宣言」を制定。地域貢献活動にも力を入れている。
2025年4月、ウスイホーム株式会社代表取締役社長に就任。

地域密着型営業で築き上げてきた不動産業界のキャリアと実績から、顧客の信頼も厚く、幅広い人脈を持つ。著名人・有名人からの相談や紹介も多い。

【資格】
宅地建物取引士
CPM(米国不動産経営管理士)
日本RSP協会 不動産仲介士 試験問題監修委員
執筆者 ウスイホーム株式会社 広報チーム
1976年に神奈川県で創業。お客様と地域の発展のため、横浜・湘南・横須賀エリアで不動産売却のお手伝いをさせて頂いております。長年にわたり蓄積してきた知見を活かし、不動産売却を検討する際に役立つ情報を発信しています。
お問い合わせURL https://www.usui-home.com/contact