「実家を売却したい」「相続した古い家を解体して更地にしたい」など、さまざまな理由で戸建ての解体を検討している方がいるでしょう。
しかし、家を取り壊すのが初めてで、「解体にどれくらいの費用がかかるのか」「どういう手順になるのか」など、分からないことも多く、なかなか踏みだせない方も多いかもしれません。
本記事では、戸建て(一戸建て※本記事では「戸建て」と呼びます)の解体費用の相場や解体するまでの手順、戸建てを解体するメリットやデメリット、戸建てを解体するときの注意点や解体費用が高くなるケースについて、プロ監修のもと、解説します。戸建ての解体を検討している方はぜひ、参考にしてください。
監修者 海沼 仁(カイヌマ ヒロシ)
【経歴】
ウスイホーム株式会社 取締役。
大学時代は不動産評価論を専攻。
卒業後、1997年にウスイホーム株式会社入社。売買仲介部門の新人賞を受賞。
2001年、新店の上大岡店店長に就任。以降、各店店長を歴任。特に新店舗の立ち上げを得意とし、後にエリアマネージャーに抜擢される。
2012年より取締役に就任。主に横浜、湘南エリアでの商圏拡大に尽力している。
地域貢献活動にも力を入れ、2021年には創業45周年を機に、SDGs推進に取り組む「ウスイグループSDGs宣言」を制定。
地域密着型営業で築き上げてきた不動産業界のキャリアと実績から、顧客の信頼も厚く、幅広い人脈を持つ。著名人・有名人からの相談や紹介も多い。
【資格】
宅地建物取引士
CPM(米国不動産経営管理士)
日本RSP協会 不動産仲介士 試験問題監修委員
戸建ては解体すべき?メリット
古くなった戸建ては、本当に、解体する方がよいのでしょうか?まずは、戸建てを解体したときの一般的なメリットについて見ていきましょう。
更地にした方が売却価格が高くなる可能性がある
戸建てを解体する大きなメリットとして挙げられるのが、「売却価格が高くなる可能性がある」ことです。
解体前の古い家を残したままの「古家つき土地」物件は、戸建ての解体費用や土地の整地などにかかる費用を、売主ではなく買主が負担することになります。そのため、更地で売却するよりも、売却価格がやや低くなる傾向があるのです。
さまざまな条件にもよるため一概にはいえませんが、「古家付き土地」で売却するよりも解体して更地にした方が、買主が見つかりやすく、売却価格が高くなる傾向があると考えられるでしょう。
「契約不適合責任」のリスクを避けやすい
「契約不適合責任」とは、売買契約において、目的物(今回の例なら「家や土地」)に対して、あらかじめ取り決めた品質や種類、数量(契約書などに記載されている「家」や「土地」などの状態や条件)などが、契約内容と合わない場合に、売主が買主に対して負うべき責任のことを指します。
不動産売買における具体的な事例としては、建物の腐食やシロアリ等の害虫による侵食、土地の汚染といった「欠陥」などがそれにあたり、売却後であっても、売主が一定の責任を追及される可能性があることを意味します。
中古住宅は建物は一定の年数が経過しており、土地の状態についても戸建てを解体してみなくては分からないケースも少なくないため、売り主でも気づいていなかった欠陥が後から見つかるリスクは高くなるのです。
「古家つき土地」を売却後に何らかの瑕疵(かし)が見つかれば、売主側が一定の責任を負うリスクは消えませんが、古家を解体して更地として売却すれば少なくとも建物の瑕疵のリスクは避けられます。
土地についても解体後の整地などの段階で、瑕疵が見つかりやすく、古家つきのまま売りに出すよりも「契約不適合責任」のリスクを避けやすくなるといえるのです。
戸建ては解体すべき?デメリット
戸建てを解体することにはメリットだけでなく、事前に知っておきたいいくつかのデメリットも存在します。戸建てを解体する際のデメリットについても解説します。
固定資産税が上がってしまう
建物を取り壊して更地にすると、固定資産税が上がるのが一般的です。
不動産を所有しているときには、「固定資産税」と「都市計画税」の2つの税金がかかりますが、土地に住宅を建てている場合は「住宅用地の特例措置」として、土地の固定資産税は最大1/6、都市計画税は最大1/3に減額されています。
しかし、建物を解体することでその適用を受けられなくなるため、特に面積が広い土地や、資産価値のある土地であれば、固定資産税が大幅に上がってしまう可能性があるのです。
また、更地にしたところで買主が見つからなければ、固定資産税を払い続けなければならず、売れない期間が長くなるほど多額なコストがかかってしまう点にも注意が必要になるでしょう。
解体費用が自己負担
解体費用がどれくらいになるのかは、物件の大きさや構造、立地条件などにもよりますが、多くの費用がかかります。
人気のエリアであれば比較的早く売却できる可能性があるため、解体費用の回収も期待できます。一方で、立地条件が悪い土地やあまり人気のないエリアの場合は、なかなか売れないケースもあるでしょう。
この場合、売れない期間の固定資産税に加え解体費用の負担金も売り主が背負うことになるため、戸建ての解体が適切な判断かどうかは、慎重に検討する必要があるといえるのです。
判断に迷う場合は、地域の相場や売買実績に詳しい地元の不動産会社などに相談してみるのもおすすめです。
戸建ての解体費用とは?
戸建ての解体を検討する中で特に気になるのは、「一体どれくらいの費用がかかるのか」ということでしょう。戸建ての基本的な解体費用は、一般的に「坪(㎡)単価」で決まり、木造や鉄骨造など戸建ての状態や構造によっても変わってきます。さっそく、一般的な戸建ての解体費用について、木造と鉄筋の建物という視点で見ていきましょう(※)。
※戸建ての解体費用は、立地や隣の家との距離、築年数や解体業者など、建物・土地の状態や解体する際の条件などで異なります。ひとつの目安としてとらえ、実際の費用については、必ず事前に確認しましょう。
木造戸建ての解体費用
木造戸建ての解体費用の単価は一坪辺り4〜5万ほどがひとつの目安です。
例えば、一般的な戸建ての広さである30坪の建物を解体する場合、解体にかかる費用は以下の計算式から、120万円前後と見ておくとよいでしょう。
4〜5万円×30坪=120万円~150万円前後
鉄筋戸建ての解体費用
鉄筋戸建ての解体の場合は、1坪あたりの単価は6〜10万円ほどで、木造に比べると少し割高になります。鉄筋コンクリート造の建物は、木造と比較すると硬い素材であるため、解体に必要な重機も増えることがその理由です。
6〜10万円×30坪=180万円~300万円前後
参考サイト:解体見積もり広場
戸建て解体工事の手順とかかる期間
戸建ての解体を検討するうえで、事前に知っておきたい事柄の中に「解体工事の手順や、解体にかかる期間」もあります。くわしく解説します。
※戸建ての解体費用は、立地や隣の家との距離、築年数や解体業者など、建物・土地の状態や解体する際の条件などで異なります。ひとつの目安としてとらえ、実際の費用については、必ず事前に確認しましょう。
現地視察~見積
解体事業者に戸建て解体の見積もりを依頼すると、事業者は現地視察のうえ見積もりを提示します。
現地視察から見積もりにかかる一般的な期間は、おおよそ2週間前後です。
依頼できる解体事業者の目星がつかない場合は、不動産会社に相談すれば対応してもらえるでしょう。更地にしたうえで売却を検討しているケースでは、解体から売却まで一貫して請け負ってもらえるのが一般的です。
更地にして新築戸建てを建築するような場合は、新築戸建ての建築を請け負うハウスメーカーでも対応可能です。
契約&あいさつ回り
解体費用の見積もりに納得できたら、依頼する解体事業者や不動産会社と契約をします。
その後、解体工事を開始するまでの間に、事業者と近隣住民へあいさつ回りをするのが一般的です。解体工事期間中は、ほこりで洗濯物が干せないタイミングが生じることや、大型車両の一時的な路上駐車や騒音などトラブルが発生することがあるためです。
契約とあいさつ回りで土日の2日間〜1週間前後は要することを想定しておきましょう。
あいさつ回りでは工事期間や時間帯、トラブル時の連絡先などを記載した案内状と共に、菓子折りや事業者の社名入りのタオルなどを持参することが多いです。
施主本人も一緒に回った方が、ご近所への印象もよくトラブルが減るといわれていますが、遠方の親の土地を更地にする場合などは、事業者が単独で対応してくれることもあります。
各種届出
解体工事を開始する前に、電気、ガス、水道、電話やインターネットなど、ライフラインの停止や解約の手続きも必要です。その際の主な注意点は以下の通りです。
- 電気・ガス・固定電話・インターネットの手続きをする際は、「利用停止」ではなく必ず「解体工事による撤去」と伝える。「利用停止」では「撤去工事」が行われないため注意が必要。
- 水道に関しては、工事期間中に事業者が使用する可能性があるため、解体事業者に対応すべき点を要確認。
- 利用停止&撤去工事までに最低でも5営業日ほどかかることもあるため、工事開始日に間に合うよう早めの届出が重要。
- 届出をする際は、各会社の「お客様番号」などの情報が必要になるため、各種請求書などを事前に準備しておく。
ほかにも、一般的に、解体工事をおこなう前に解体事業者が行う届出に、建設リサイクル法の届出、道路使用許可申請などがあります。
戸建て解体工事の開始~整地
契約後のあいさつ回りや各種届出の手続きが終わったら、いよいよ戸建ての解体工事に入ります。
戸建ての解体工事の開始から更地にするまでにかかる期間は、建物の広さや築年数、立地条件などの状態によって異なりますが、おおよそ2週間〜1カ月程度です。
一般的に、木造戸建てよりも鉄筋戸建ての方が頑丈な構造になっているため、解体工事期間が長くなる傾向にあり、木造戸建てなら2週間程度、鉄筋戸建てなら1カ月前後が目安になるでしょう。
駐車場やフェンスなどの外構部分も壊して更地化する場合は、上記に加えて2週間ほど期間を要することがあります。
隣家と極端に距離が近かったり、家の前の道路が狭かったりすると、重機で解体できず手作業での解体となるため、解体にかかる期間が延びる可能性があります。
滅失登記
解体工事が終了したら法務局に対して、建物がなくなったことを記録するための「滅失登記」の手続きを行います。
滅失登記の手続きを解体事業者や不動産会社、土地家屋調査士などに委任する場合、3~5万円程度の代理申請諸費用が別途かかります。自分で行うことも可能で、必要となる主な書類は以下の通りです(※)。
- 登記申請書
- 案内図(解体した建物の位置がわかる書類)
- 建物滅失証明書
- 登記事項証明書
- 解体業者の印鑑証明証
- 原本還付請求書(原本を返却してほしい場合に必要になる書類)
なお、滅失登記の手続きには登録免許税はかかりません。申請から登記が完了するまでの期間は、1週間程度です。
建物滅失登記の手続きをするのは義務であり、申請を怠った場合は10万円以下の過料に処されることもあるため、忘れず行いましょう。(不動産登記法第164条)
※条件などによって、必要になる書類が追加されることがあります。事前に、地域の法務局に確認しましょう。
戸建ての解体費用が高い・期間がかかるケース
戸建ての解体費用や工期は、立地条件や築年数、建物の状態によって異なります。戸建ての解体費用が高くなるケースや、解体の期間が長くなるケースについて解説します。
解体工事は昔より手間がかかるようになっている
建設工事や解体工事は、2000年に「建設リサイクル法」が制定されたことで、昔よりも時間や費用がかかるようになりました。
建設リサイクル法とは、廃材を資材ごとに分類して適切に処理することや、再資源化を促すために定められた法律です。
建設リサイクル法の制定以前は、廃材は分別することなくまとめてゴミとして処理することが多かったのですが、建設リサイクル法の導入により、建設発生木材やコンクリート塊、アスファルトなどは、解体事業者が重機や手作業で分別や回収することが義務付けられました。
そのため、以前よりも、解体工事費用が高くなったほか、工期が長くかかるようになったのです。
接地道路が狭く大型重機が入れない
解体現場の接地道路が狭くて大型重機が入れない場合は、手作業でおこなわねばならない工程が増えるため、工期が長くなり、人件費も増す傾向があります。
隣家が密接した住宅街
隣家が密接した住宅街や、隣家と壁を共有しているといったケースは、工事日数が長くなる傾向です。
隣家の壁などの破損防止や廃材が隣家へ入らないようにするため通常より慎重な作業が必要になったり、騒音や振動が響きやすいため作業できる時間が短くなったりすることが主な原因です。
できるだけスムーズに工事を進めるためにも、事前のあいさつ回りを行う際に、工事日程や作業時間などを丁寧に説明し、理解を得ておくことも重要です。
アスベストを使用した古い戸建て
アスベストを使用した古い建物は、一般的な建物よりも工事費用や日数がかかると考えておきましょう。
工事に関わる作業員や近隣住民がアスベストを吸いこんでしまうと、健康被害を受けるリスクがあることなどから、飛散防止剤や水をまいて作業付近の湿潤化をおこなうなどの丁寧な作業が必要になるためです。
また、アスベストの使用状況についての事前調査や調査結果を都道府県に報告する義務も生じるため、より多くの時間や費用がかかります。
解体費用は、アスベストを使用した建材の使用量など条件によって異なるので、事前の見積りの段階で説明をよく聞き、相談しながら解体工事を進めましょう。
工事費用があまりに高い場合は要注意
一般的な戸建ての解体より期間や費用がかかるケースを解説してきましたが、本記事の前半で紹介した戸建ての解体費用や期間の目安と比較して、「費用があまりに高い」「期間が長すぎる」と感じた場合は、依頼している事業者に再確認したり、場合によっては別の事業者や不動産会社へ相談してみましょう。
ただ我慢したり、クレームを言ったりするのではなく、不当な金額や工期になっていないか話を聞き、その根拠を確認することが重要だからです。
事業者とのトラブルを避けるためには、見積りの段階で、分からない点などは気兼ねしないで相談してみることをおすすめします。
戸建ての解体はしっかり計画を立てておこなおう
戸建ての解体は、高く売却できる可能性がある、契約不適合責任のリスクを避けやすくなるといったメリットがある一方、固定資産税が大幅に高くなる、解体費用がかかるといったデメリットへの懸念もあります。
メリット、デメリットの両方をしっかり理解したうえで、慎重に検討のうえ計画を立てるのが望ましいでしょう。
戸建ての解体後に更地にして売却することを検討している場合は、売却時の対応まで一貫して対応できる地元に強い不動産会社を検討するのもおすすめです。解体〜売却までの中で、書類や調査、手続きなど共通する部分が少なくないため、手間や費用を節約できる可能性があるためです。
不要なトラブルを避けるためには、解体費用や工期について事前にしっかり確認し、納得した上で依頼することが重要です。後悔のない解体工事につなげていきましょう。
参考:ゴミ屋敷清掃・汚部屋の片付けなら【お助けうさぎ】| 株式会社Tabinchu
湘南エリアの戸建て情報をお探しの方は下記よりご覧ください。
- 湘南の戸建て・一軒家(新築・中古)の相場や周辺情報
- 藤沢の戸建て・一軒家(新築・中古)の相場や周辺情報
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【横浜、横須賀周辺の物件】
執筆者 ウスイホーム株式会社 広報チーム
1976年に神奈川県で創業。お客様と地域の発展のため、住宅に係わるあらゆるお手伝いをさせて頂いております。長年にわたり蓄積してきた知見を活かし、新築戸建てや中古戸建てを検討・購入する際に役立つ最新情報を発信しています。
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