戸建て(一戸建て※本記事では「戸建て」と呼ぶ)の売却を考える理由はさまざまです。相続、買い替え、引っ越し、ローン返済の事情などもあるでしょう。
相続に関する売却であれば、戸建ての持ち主が「生前」売却するのか、「亡くなった後」に売却するのかで、注意点が変わります。
買い替えや引っ越しにともなう売却であれば、ローンの有無などで、戸建て売却の流れが変わってくるでしょう。
本記事では、戸建て売却をする中でも特に気をつけることが多い「相続」「ローン」におけるポイントを解説。戸建て売却の一般的な流れ、諸費用や書類、注意点について、専門家監修のもと、解説します。
まずは、戸建て売却において注意したい「贈与」や「相続」が絡むケースと、買い替えや引っ越しでも「ローン返済の有無」によって異なるポイントから解説しましょう。
監修者 海沼 仁(カイヌマ ヒロシ)
【経歴】
ウスイホーム株式会社 取締役。
大学時代は不動産評価論を専攻。
卒業後、1997年にウスイホーム株式会社入社。売買仲介部門の新人賞を受賞。
2001年、新店の上大岡店店長に就任。以降、各店店長を歴任。特に新店舗の立ち上げを得意とし、後にエリアマネージャーに抜擢される。
2012年より取締役に就任。主に横浜、湘南エリアでの商圏拡大に尽力している。
地域貢献活動にも力を入れ、2021年には創業45周年を機に、SDGs推進に取り組む「ウスイグループSDGs宣言」を制定。
地域密着型営業で築き上げてきた不動産業界のキャリアと実績から、顧客の信頼も厚く、幅広い人脈を持つ。著名人・有名人からの相談や紹介も多い。
【資格】
宅地建物取引士
CPM(米国不動産経営管理士)
日本RSP協会 不動産仲介士 試験問題監修委員
【戸建て売却】生前に贈与する際の利点 と注意点
まずは相続を考えた上で、生前に戸建ての家を売却する際の利点と注意点を解説します。一般的に、所有者が生前に家を売却して現金を受け取る人に渡す場合は、相続ではなく「贈与」、亡くなられた後の場合に「相続」と呼びます。
※法律や制度は変更されることがあるため、必ず最新情報を確認しましょう。
利点①:戸建て所有者の意思を反映できる
家の処分方法などについて所有者の意向が反映できる点が大きな利点といえるでしょう。生前に相続人とも話し合うこともできるため、意思疎通不足によるトラブルになりにくいというメリットがあります。
利点②:血縁関係の有無に関係なく贈与できる
所有者が亡くなったあとの「相続」では、「法定相続人の配偶者」と「血族」が引き継ぐのが通常ですが、生前の「贈与」なら血縁関係の有無に関係なく財産を引き継ぐことが可能です。
利点③:今の生活や老後の資金としてあてられる
生前に家を売却すれば、売却代金を今の自分たちの生活や、老後資金として活用できます。
気持ちの面でも、今の生活や老後の年金生活に対する不安の軽減、自分の意思で資金を使えることによる充実感などよい面が挙げられます。
注意点①次の住まいを探す手間とリスク
実際に住んでいる家を売却する場合は、次の住まいを探さなければなりません。ご高齢であれば賃貸の入居審査が厳しく、次の住まいがなかなか見つからない可能性があります。
住み慣れた土地を離れて生活することはストレスがかかることも…。実際の引っ越し先が気に入らなくて後悔したというケースも少なくありません。
注意点②贈与税がかかる
生前に戸建てを売却して子などに現金を贈与すると「贈与税」がかかります。一般的に、亡くなった後にかかる「相続税」よりも、「贈与税」の方が高くなることが多いため、慎重な検討が必要です。
贈与税は、年110万円の「基礎控除」や「相続時精算課税制度」がありますが、相続税にはより大きな節税につながりやすい「3,000万円+(法定相続人数×600万円)」といった基礎控除や特例があります。
ただし条件などによって一概にはいえないため、どちらが節税効果が高いか、不動産会社などに相談してシミュレーションを行うことなどをおすすめします。
参考:
要検討|家族信託という制度
参考としてお伝えしたいのが、「家族信託」という制度の利用です。戸建ての所有者が、信頼できる家族に不動産や預貯金などの財産を託して管理〜処分までを一貫して任せる手法をいいます。相続に関しても、家の所有者自身の意志で細かく指定することが可能です。
家の所有者が認知症や病気で通常の判断が難しくなったとき、口座が凍結されるケースがありますが、家族信託を利用していれば、託された家族が当該口座から入院費を引き出したり、戸建てを売却して入院費用にあてることができます。
以前から銀行などが行っていた「遺言信託」といった商品は、「銀行」に管理や処分を任せ、なおかつ、一般的な不動産は扱わず預貯金などの資産のみが対象というのが一般的です。家族信託は家族に託せ、不動産も対象になる点が大きな違いです。
弁護士、司法書士、行政書士、家族信託を扱っている不動産会社、金融機関などに相談するのが一般的ですが、自分で行うことも可能です。ただし、家の所有者が認知症や病気で判断が難しくなった後の申し込みはできません。
【戸建て売却】逝去後に相続する際の利点と注意点
次に、生前に贈与するのではなく、所有者が亡くなった後に戸建ての家を売却して相続にした場合の利点と注意点について確認していきましょう。
※法律や制度は変更されることがあるため、必ず最新情報を確認しましょう。
利点①相続税の方が控除額が多い可能性がある
先にも少し触れましたが、相続税には「3,000万円+(法定相続人数×600万円)」の基礎控除があります。そのため、贈与で財産を引き継ぐよりも節税できる可能性が高いといえます。
参考:
利点②特例が利用できる可能性がある
条件に該当すれば、下記のような特例が利用できる場合があります。
ただし、「空き家に係る譲渡所得の特別控除」と「取得費加算の特例」の併用はできないなど、各特例には細かい条件があります。特例が利用できるか否かについては、住んでいる役所や税務署、相続などを扱っている不動産会社などに相談してみましょう。
小規模宅地等の特例 | 被相続人が自宅として使用していた使っていた土地を、配偶者もしくは生計を一にしていた同居親族が相続した場合に330平方メートルまでは土地の評価額を80%減額するもの。該当すれば相続税を抑えられる。 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)国税庁 |
---|---|
空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例 | 被相続人死亡により空き家になった建物・土地について、一定の要件に当てはまれば譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除できる。該当すれば所得税(と住民税)を抑えられる。 ※現行2024年12月31日までに空き家を売った際に適用できる特例 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 国税庁 |
取得費加算の特例 | 相続した財産を相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡した場合に、一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができる。 該当すれば所得税(と住民税)を抑えられる。 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 |
参考:
注意点①相続人同士でトラブルになりやすい
相続人が複数人いる場合、戸建ての家を物理的に分割できないことや、家への思い入れや立場の違いがあることから、「誰が家を引き継ぐのか」「その他の金融資産などは誰にどう分配するのか」などトラブルになりやすいことは、よく知られています。
家を相続しない相続人には、現金や有価証券などその他の資産を分配するのが一般的ですが、分配金額などで折り合いがつかないことも多く見られます。
注意点②戸建ての売却では手続きで負担がかかることも
兄妹など複数の相続人がいる場合、戸建ての売却には相続人全員の同意と捺印が必要です。売却時には基本的に全員の立ち合い(または委任状)が必要になるなど、売却時の手続きなどは煩雑になりやすいのです。
兄妹の代表者1人を相続人にして、売却手続きを行えば上記のような手間は省けますが、手続きの負担や翌年の税負担なども代表者ひとりにいくためトラブルになることがあります。
【戸建て売却】ローン返済中の注意点
住宅ローンを返済中のタイミングで戸建ての売却を考えるケースも少なくありません。基本的に、住宅ローンの返済中に家を売却することはできませんが、ローン返済中でも戸建ての家を売却できる可能性があります。
ローン返済中に戸建てを売却する場合について詳しく解説します。
注意点①ローン残債と戸建て売却の相場を確認
住宅ローンが残っている家を売るには、ローンを完済することで「抵当権」を抹消する必要があります。
抵当権とは、お金を借りた債務者が返済不能となった場合に備えて、銀行などの債権者が担保とした土地や建物を処分することで弁済を受ける権利です。
一般的に抵当権がついた住宅は買い手がつかずに売却が困難なため、ローンを完済して抵当権を抹消しなければならないのです。
そのため、ローンが残っている家を売却したいときには、まずは「ローンの残債がいくらあるのか」「ローンの返済にあてる貯蓄がどの程度あるか」を自分で確認すると同時に、不動産会社に査定を依頼し「家の売却額がいくらになるか」を見積もってもらう必要があります。
注意点②戸建て売却|アンダーローンの場合
アンダーローンとは、今抱えている「住宅ローンの残債」よりも、「戸建ての売却金額」の方が上回るケースをいいます。
このケースでは、売却代金により住宅ローンを完済し抵当権を抹消できる可能性が高いため、ローン残債があっても家の売却が可能になると考えられます。
注意点としては、金融機関への事前相談が必須という点です。繰り上げ返済日の2週間前くらいまでに金融機関に対して、「一括繰り上げ返済」と「抵当権抹消に関する手続き」に関する相談と依頼を行う必要があるのです。
このときの金融機関の手数料は30,000円前後、抵当権抹消に関する法務局への手数料は1軒あたり1,000円で、司法書士に手続きの代行を依頼した場合の手数料は10,000円〜35,000円が相場です。そのほか登記簿謄本の取得代など必要書類の実費などがかかります。
注意点③戸建て売却|オーバーローンの場合
「戸建ての売却額」よりも「住宅ローンの残債」の方が大きくなるケースを、オーバーローンといいます。一般的には、オーバーローンの場合は通常の売買契約で家を売却することはできません。
売却するためには、まずは貯蓄でローン残債を完済する方法を検討し、貯蓄でローン完済ができない場合には、以下のような通常の売却とは別の方法を考える必要があります。
- 住み替えローン
戸建ての売却を前提に、売却代金で返済しきれなかったローン残債(例:500万円のローン残高)と新たに購入する不動産のローン(例:2,000万円)をまとめて借りる(合計2,500万円)ローンです。
融資額が大きくなるため審査が厳しく、審査に通らないことも少なくないことに注意が必要です。
- 任意売却
すでに住宅ローンの返済を滞納している状態なら「任意売却」という選択肢もあります。任意売却とは、住宅ローンの債権者(金融機関)の同意を得て、一定の条件で不動産を売却する方法です。
厳しい条件のため申請をしても許可がでないことが多い点や、オーバーローンの状態では、不動産売却後も住宅ローン残債を返済し続ける必要がある点などに注意が必要です。
ローンの支払いが苦しいことから戸建ての売却を検討している場合は、より金利が低い商品への借り換えや、返済期間の延長といった対策を含めて、金融機関に相談することも検討しましょう。
要検討:「リースバック」という方法もある
アンダーローンの場合は、リースバックを利用することも可能です。リースバックとは、家を売却して売却代金を得た後に、その家を賃貸として借りて継続して住む方法をいいます。リースバックは正式名称を「セール・アンド・リースバック」といいます
リースバックは、下記のような方に適しています。
- 資金確保がしたい方
- 住宅ローンを完済したい方
- 不動産を現金化して相続対策がしたい方
- まとまった現金がほしいが今の家にも住み続けたい方
リースバックは、まとまった資金が比較的短い期間で手に入り、家を売却しても引っ越しが不要といったメリットがあります。
買い戻し特約(売却した住まいを買い戻せる権利)を付帯することで、将来的に家を買い戻せる可能性を残すこともできます。
【戸建て売却】相場・査定調査~売却までの流れ
ここまで戸建てを売却する際の注意点について解説しましたが、そもそも戸建てを売却するにはどのような手順が必要なのでしょうか。ここでは、戸建ての家を売却する一般的な流れについて解説します。
※条件や状況によって流れは異なります。
1 戸建て売却の相場と査定判断して販売価格を決める
- 地域の相場から適正価格を調べる
戸建ての家を売却する際は、まず物件の地域の相場などから「適正価格」を調べます。
相場価格は、国土交通大臣が指定する不動産流通機構が運営している「レインズマーケットインフォメーション」や、国土交通省が運営している「土地総合情報システム」を利用するのがおすすめです。
- 不動産会社に相談する
不動産会社に査定を依頼します。
査定の方法には、住所や土地の面積などを申告して電話やインターネットなどでやり取りする簡易的な「机上査定」がありますが、実際に来てもらって査定する「訪問査定」の方が精度が高くおすすめです。
参考:
2 不動産会社を決定し媒介契約を結ぶ
つづいて、売却活動を依頼する不動産会社を選び、売却の仲介をしてもらうために媒介契約を結びます。
媒介契約には、一般媒介契約と専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。それぞれの特徴は下記の通りです。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
---|---|---|---|
複数社との契約 | 可能 | 不可 | 不可 |
直接取引 | 可能 | 可能 | 不可 |
レインズへの登録 | 任意 | 義務 | 義務 |
売買活動の報告頻度 | 任意 | 2週間に1回 | 1週間に1回 |
契約期間 | 定めなし | 最長3カ月 | 最長3カ月 |
- 専任媒介契約
まずは専任媒介契約から解説すると、媒介契約は1社とだけ結ぶ契約をいいます。
契約中は他社と媒介契約を結べませんが、不動産会社の立場からすると、物件が売れれば売上が確実に入るため、積極的な売却活動が期待できるのが特徴です。買主と直接契約も可能ですが、媒介契約履行費用が発生します。
- 専属専任媒介契約
専任媒介契約と同様に1社と媒介契約を結びます。
買主との直接取引はできませんが、専任媒介契約と同様に、戸建ての売却が不動産会社の売上に直結するため、積極的な売却活動を期待できます。
- 一般媒介契約
複数社と媒介契約を結べることが大きな特徴です。
一方で、自社ではなく他社の売上になる可能性があったり、活動報告が任意であったりする点から、専任や専属専任よりも不動産会社の活動が鈍化する懸念があります。
- 不動産会社が直接買い取るケース
表にはありませんが媒介契約ではなく、不動産会社が直接家を買い上げ、不動産会社が所有・管理する物件として売却を目指すケースもあります。
おすすめ動画:【いっしょに不動産(ウスイホーム)】『売却のときの不動産屋さんの本当の気持ち/専任媒介・一般媒介』
3 戸建ての売却活動を開始
媒介契約を結んだあとは、いよいよ戸建ての家の売却活動を開始します。地域の相場や立地条件などを加味して家の販売価格を決定します。
その後は、不動産会社が主導して、不動産会社のホームページや物件情報サイト、広告媒体などに物件の情報を掲載します。
4 内覧希望の対応
広告などを見て、物件の購入を検討している方から問い合わせがあれば、内覧対応(物件の案内・説明)を行います。内覧当日は、基本的には売主が物件の案内や説明などの対応を行います。
内覧の希望があったときには、家の印象をよくするため、下記の準備をしておくと安心です。
- 物件のアピールポイントをまとめる(住宅や周辺環境の魅力など)
- 家を売る理由
- 人数分のスリッパを用意
- よく見られるリビングやキッチン、水回り、庭などを掃除する
家を売る理由は、ある程度正直に伝える必要があります。しかし、「駅から遠くて歩くと通勤や買い物が大変」といった本当のネガティブな理由も、「足が悪くなり、駅チカのマンションへ引っ越すため」「自分は乗れないが、自転車を利用すれば10分で着く」など視点や言い方を工夫することでポジティブな印象に変わります。
5 活動状況の報告と見直し
不動産会社と専任媒介契約か専属専任媒介契約を結んでいる場合、不動産会社は売主に対し、販売中の物件の状況(ホームページの閲覧回数や問い合わせ状況など)について報告する義務があります。
専任媒介契約なら2週間に1回以上、専属専任媒介契約においては1週間に1回以上の報告が不動産会社に求められます。
報告内容が芳しくなければ、競合物件の販売・成約状況などを踏まえて、今後の売買戦略を練り直したり、販売価格を調整したりしましょう。
6 購入申し込み
物件の購入意思が固まった方がいると、不動産会社経由で「購入申込書」が渡されます。購入申込書の内容を確認したら、購入希望者と条件交渉を行います。
購入申込書に記載される内容は、主に以下の通りです。
- 購入価格:買主の希望価格
- 支払条件:手付金・内金・残代金
- スケジュール:契約日・決済日・引き渡し日
- 融資の利用予定:融資の利用有無と予定額 など
ちなみに、この段階は正式な「契約成立」ではないため、「申し込みのキャンセル」が生じることがあります。条件交渉には、値引き依頼なども含まれるため、不動産会社と相談しながら条件交渉の調整を進めましょう。
7 戸建て売買契約
条件交渉の後に物件の買主が決定したら、不動産会社経由で物件の最終調査などを行い、問題がなければ売買契約を結びます(※1)。
売買契約当日は、売主と買主、媒介の不動産会社の三者が、一カ所にそろい売買契約を行うのが一般的です。「重要事項説明書」(※2)を読み合わせ、売買契約書を締結します。各書類に署名・捺印し、手付金の授受をすれば、売買契約は完了です。
売買契約時には、必要な持ち物(実印や銀行印、本人確認書類、権利証など)があります。詳しくは、このあとの「戸建て売却にかかる諸費用と必要書類」で解説します。
※1 買主の住宅ローンの事前審査や本審査はこの段階で行われるため、ローン審査が通らず売買契約に至る前に、キャンセルになるケースもあります。
※2 重要事項説明とは、不動産の売買契約時に必ず行わねばならない事柄で、宅地建物取引士が、買主に対して売買される物件の詳細情報(物件の瑕疵、売買条件など)を説明することをいい、それを文書でまとめたものを「重要事項説明書」と呼びます。
8 引き渡し
売買契約の締結後、1カ月を目途に物件の引き渡しを行います。
売主は、売買契約で定めた日までに、物件をきれいな状態にして引っ越しを完了させる必要があります。「引っ越し業者の予約がとれない」「片付けが終わらない」といったトラブルがないように、早めに引っ越しの準備をはじめましょう。
引き渡しは、売買契約の中で定めた日時に、売主、買主、不動産会社、金融機関の担当者、司法書士を交えて決済と同時に行います。当日には買主から代金(手付金を除いた残金)を受け取ります。
また、売主の住宅ローンが残っている場合は、買主の決済と同時に抵当権抹消登記なども行う必要があります。事前に融資先の金融機関に連絡し、一括繰り上げ返済と抵当権抹消書類の準備を依頼しておきましょう。
決済が完了したら、同日のうちに不動産の引き渡しが行われます。
戸建て売却にかかる諸費用と必要書類
戸建ての家を売却する際には、どのような書類が必要で、どのような費用がどのくらいかかるのでしょうか。戸建て売却時にかかる諸費用と必要書類について詳しく解説します。
※代表的な例を紹介しているため、条件などによって異なることがあります。必ず、実際の書面などで確認しましょう。
戸建ての売却にかかる諸費用
戸建ての家の売却時には、下記のような諸費用がかかります。
費用名 | 費用の目安 | 費用が発生するタイミング |
---|---|---|
仲介手数料 | 売却価格によって変動 例)3,000万円で売却した場合は105万円前後(税込)※1 | 売買契約成立時・物件引き渡し完了時で半々 |
印紙税 | 契約金額によって変動 例)3,000万円で売却した場合は2万円(軽減措置適用期間中は1万円※2) | 売買契約書の作成時(電子契約は不要) |
抵当権抹消費用 | 個人で手続き:1千円~司法書士に依頼:1万円~3万5千円前後 | 移転登記時 |
住宅ローン返済手数料(一括返済) | 1万円~3万円前後 | 一括返済時 |
ハウスクリーニング費用 | 5万円∼15万円前後(広さや状態によって変動) | クリーニング実施後 |
測量費用 | 30万円~100万円前後※3 | 測量実施後 |
※1 売却価格400万円超の場合の速算式(仲介手数料=売却価格×3%+6万円+消費税)により算出
※2 軽減措置は2024年3月31日までに作成される文書に適用
※3 市区町村や国の立ち合いが必要かどうかによって変動
上記はあくまで目安となりますが、事前に諸費用がどのぐらいかかるのかをある程度計算し、備えておくことが大切です。
戸建ての売却でかかる税金
戸建てを売却した際には、売却して得られた利益(譲渡所得)に、所得税と住民税が課せられます。また、所得税には2037年まで復興特別所得税が加算されます。
確定申告時の譲渡所得金額の計算式は、以下の通りです。
譲渡所得金額=売却金額 -(必要経費【 取得費+ 譲渡費用】) |
- 取得費とは?
資産の購入代金・仲介手数料・登記費用・設備費・改良費など(償却費相当額を控除して計算)のことです。取得費がわからない場合は、売却金額の5%相当額を取得費とすることが可能です。
- 譲渡費用とは?
仲介手数料・譲渡のために直接要した費用(例:測量費)などのことをいいます。
なお、譲渡所得の所得税・住民税の税率は、不動産を所有していた期間によって異なります。所有期間別の各税率は下記のとおりです。2023年時点では、0.3%〜0.63%前後の復興特別所得税が加算されます。
所得種類 | 短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 |
---|---|---|
所有期間 | 5年以下 | 5年超 |
所得税 | 30% | 15% |
住民税 | 9% | 5% |
合計 | 39% | 20% |
※所有期間は、売却した年の1月1日の時点を基準として決定されます。
参考:
戸建ての媒介契約で必要になる書類
戸建ての媒介契約時に必要となる主な書類は、下記の通りです。
- 本人確認書類
- 印鑑(認印でも可能)
- 土地・建物の権利証(登記識別情報通知書)
- ローン残高証明書(住宅ローンの残債がある場合)
- 建物に関する書類
- 物件購入時の契約書や重要事項説明書
- 間取り図
- 物件のパンフレット
- 建築確認済証や検査済証
- 耐震診断報告書、アスベスト使用調査報告書 など
食器洗い乾燥機や浴室暖房乾燥機、太陽光パネルなどの設備についても、保証書や説明書などもあれば用意しておきましょう。
戸建ての売買契約で必要になる書類
売買契約時に必要となる書類は、以下の通りです。
- 本人確認種類
- 実印
- 住民票
- 印鑑証明書(3カ月以内に発行したもの)
- 登記関係書類(権利証・登記識別情報通知)
- ローン残高証明書(ローン残高がある場合)
- 銀行口座の通帳
- 固定資産税納税通知書(不要なケースも多い) など
上記の必要書類は条件や不動産会社によって異なる場合もあるため、必要なものを必ず確認しておきましょう。
また、代理人が契約を行う際は上記に加えて委任状や代理人の印鑑、売主の印鑑証明書、代理人の本人確認書類も必要となるため要注意です。
【戸建て売却】後悔しないための注意点
長年暮らした思い入れがあり、気軽に売り買いが難しいのが戸建ての家です。家を売却してから「売らなければよかった」と後悔しないために、事前に確認すべき注意点について解説します。
注意点①本当に売却だけが手段か考える
これまでも少し触れていますが思い入れのある家を売却した場合、喪失感や罪悪感に襲われたり、引っ越し先の住み心地に不満が出るケースがあります。後悔しないためにも、本当に売却がベストな方法かを考えましょう。
家族信託やリースバックといった手法を利用して、今の家に住み続ける方法もあります。自分だけでは答えが出せないときは、親族や信頼できる第三者、不動産会社などに相談することも検討しましょう。
注意点②兄妹・親戚とよく相談する
親や親族の家を相続などで売却するケースでは、普段は仲がよかった兄妹や親戚でも、感情的になったり、トラブルになることが多く見られます。
売却の可否、維持する場合の管理や費用、売却する場合の手続きや費用など、「長男だから」「遠方に住んでいるから」といった各人の言い分を超えて、長期的な視点で話し合うことをおすすめします。
注意点③リースバックも条件をよく検討する
リースバックは、不動産を現金化して相続対策がしたい方や、高齢になったら老人ホームに入居したり、利便性のよい場所に引っ越しすることを検討したりしている方には便利な方法です。
ただし、一般的にリースバックの契約は数年単位での更新となるため、賃料上昇や条件変更のリスクがあることを知っておきましょう。
リースバックの契約時には、契約内容(売却価格・賃料・契約期間・契約形態など)を十分に確認し、10年、20年と住み続けられるのかを検討してから判断しましょう。
【戸建て売却】売れないときの対策
いざ、戸建ての売却を決めたものの家が売れないときには、どのような対策をとればよいのでしょうか。ここでは、戸建てが売れないときの対処法について解説します。
対策①売れないときは販売価格と相場を見直す
物件の「内覧」の申し込みすら来ない場合は、地域の戸建て相場に対して販売価格が高い可能性が考えられます。地域の相場だけでなく、築年数や立地などに見合っているか価格を見直しましょう。
また、販売しているチラシやHPに掲載している画像がよくないケースもあります。「明るさ」「清潔感」のある印象の画像になるよう撮影し直してみるのもおすすめです。
対策②内覧での印象を上げる
「内覧」の申し込みまで来ているのに売れない場合は、内覧での印象をあげるために、ハウスクリーニングをしたり、家にあるものを一次的にトランクルームに預けてみたりなど、家の中の「明るさ」「清潔感」を意識して対策してみましょう。
家族では気づかない「家のニオイ」が気になるケースも。絨毯やカーテンを取り換えたり、ハウスクリーニングなども検討してみましょう。
対策③不動産会社に再度相談してみる
戸建ての家に限らず、物件の売却は不動産会社の担当者の手腕によって成果が変わってきます。
成約につなげるための工夫をしたり、販売価格を見直したりしても家が売れない状況が続くようなら、担当者だけでなく仲介している不動産会社の店長なども含めた複数人で、今後の対策を再度検討してもらうことをおすすめします。
もしも、不動産会社との媒介契約が「一般媒介契約」である場合、「専任媒介契約」や「専属専任媒介契約」の方が、不動産会社側は物件を売るための対応やサービス提供しやすくなるため、媒介契約の切り替えも検討してみましょう。
戸建てを適切に売却するために注意点や流れを知ろう
戸建ての家を売却を考えるときには、引っ越しといった理由の他に、相続やローンなどさまざまな理由があるでしょう。
戸建てを適切なタイミングや価格で売却するためには、状況に応じた注意点や流れを知っておく必要があります。ご自身の状況や家族・親族などの希望も考慮しながら慎重に検討することをおすすめします。
参考:【関連記事】家を相続したときに必要な手続きと相続登記の方法
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執筆者 ウスイホーム株式会社 広報チーム
1976年に神奈川県で創業。お客様と地域の発展のため、住宅に係わるあらゆるお手伝いをさせて頂いております。長年にわたり蓄積してきた知見を活かし、新築戸建てや中古戸建てを検討・購入する際に役立つ最新情報を発信しています。
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