土地売却

相続した不動産をスムーズに売却!流れ・税金・注意点まで解説

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「親から実家を相続したけれど、住む予定がない」「複数の相続人でどう分ければいいか分からない」など、相続した不動産の扱いに頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。

放置しておくと維持費がかさむだけでなく、思わぬトラブルに発展することもあります。

本記事では、相続した不動産をスムーズに売却するための手続き、知っておくべき税金やお得な特例、そして売却時の注意点まで徹底解説します。

後悔しない不動産売却のために、ぜひお役立てください。

相続した不動産の売却を考えるべきケースとは?

相続した不動産を売却するかどうかは、相続人の状況や不動産の状態によって慎重に判断する必要があります。まずは、売却を検討すべき具体的なケースと、売却のメリット・デメリットを把握しましょう。

①利用予定がなく、遠方で管理が難しい

相続人に不動産を活用する意思や予定がないケースです。
特に、不動産が現在お住まいの場所から遠方にある場合、定期的な換気や清掃、庭の手入れといった適切な管理を行うことは物理的に困難になります。
このような状況では、不動産が放置されやすくなるため、売却が検討対象となります。

②維持費の負担が大きい

不動産は所有しているだけで、固定資産税や都市計画税、火災保険料といった費用が毎年発生します。とくにマンションであれば、これに加えて管理費や修繕積立金の支払いも必要です。これらの継続的な金銭的負担が家計を圧迫している、あるいは将来的に大きな負担になると考えられる場合は、売却を考えるべきタイミングと言えるでしょう。

③相続人が複数いて、公平に分割したい

遺産分割において、不動産は現金のように簡単に分けることができません。
誰か一人が相続すると他の相続人との間に不公平感が生まれやすく、共有名義にすると将来の売却や管理の際に全員の同意が必要となり、手続きが複雑化します。
相続人間の公平性を最優先し、後々のトラブルを避けるために、売却して現金で分けるという方法が有効です。

④相続税の納税資金が必要

相続税は、原則として相続開始から10か月以内に現金で一括納付しなければなりません。もし手元に十分な現金がなく、納税資金を準備する必要がある場合、不動産の売却が資金確保の主な手段となります。売却活動には時間がかかるため、納税期限から逆算して早めに準備を始める必要があります。

⑤老朽化が進み、活用が難しい

建物の老朽化が著しく、そのまま住むには大規模なリフォームや修繕が必要となるケースです。このように、活用するために多額の先行投資が必要となるような物件は、売却を検討すべき状況にあると言えます。

これらのケースに一つでも当てはまるなら、まずは資産価値がどれくらいあるのかを把握するためにも、一度不動産会社に査定を依頼してみることをお勧めします。

相続した不動産を売却するメリット・デメリット

相続した不動産を売却するメリット

①維持管理の負担からの解放

所有しているだけで毎年かかる固定資産税や火災保険料、マンションの管理費・修繕積立金といった金銭的負担がなくなります。また、定期的な清掃や庭の手入れ、遠方からの交通費など、時間的・物理的な管理の手間からも解放されます。

②現金化による公平な遺産分割

不動産は物理的に分割することが難しく、相続トラブルの原因になりがちです。
売却して現金に換えることで、相続分に応じて1円単位で明確かつ公平に分割することが可能になります。

③空き家を放置するリスクの回避

老朽化が進み倒壊の危険性が著しく高い、衛生上有害となる恐れがあるなどの状態にある空き家は、行政から「特定空き家」に指定される可能性があります。
「特定空き家」に指定されると、「住宅用地の特例措置」(固定資産税の優遇措置)が適用されなくなり、固定資産税が最大で6倍に跳ね上がるリスクがあります。

さらに、行政からの改善勧告に従わない場合、最終的には行政代執行(強制的な解体など)が行われ、その高額な費用が所有者に請求されることも。

売却することで、これらのリスクを根本から解消できます。

④税金の特例を活用できる可能性がある(節税効果)

相続によって取得した不動産を一定期間内に売却した場合、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」など、税制上の優遇措置を受けられる可能性があります。これにより、不動産売却時にかかる譲渡所得税や住民税の負担を軽減できる場合があります。

相続した不動産を売却するデメリット

①売却手続きに手間と時間がかかる

不動産売却は、思い立ってすぐに完了するものではありません。
相続登記の手続きから始まり、不動産会社の選定、媒介契約、販売活動、内覧対応、交渉、契約、引き渡しまで、多くのステップがあり、数か月から1年以上かかることも珍しくありません。専門的な知識も必要となるため、信頼できる不動産会社との連携が重要です。

②売却に費用と税金がかかる

売却時には、不動産会社に支払う仲介手数料や、契約書に貼る印紙税などの諸費用がかかります。また、売却して利益(譲渡所得)が出た場合は、翌年に所得税・住民税を納める必要があります。

参考記事:

不動産売却でかかる税金一覧とポイント解説

不動産売却の費用一覧|空き家・リースバック・資産運用などの資産活用法

③必ずしも希望価格で売れるとは限らない

不動産市場の状況や物件の状態、立地条件などによっては、期待していた価格やタイミングで売却できない可能性があります。

④不動産という資産そのものを失う

売却すると現金は手に入りますが、土地や建物といった実物資産は失われます。
将来的に不動産の価値が大きく上昇したり、再び住みたくなることもあるかもしれません。

売却を決めたら知っておくべきこと(タイミング、相場、期間の目安)

相続した不動産の売却を決断したら、成功させるためには「売却のタイミング」「適正な相場」「売却完了までの期間」という3つの重要なポイントを押さえる必要があります。これらを事前に把握しておくことで、計画的に売却活動を進め、後悔のない取引を実現できます。

相続した不動産の売却タイミングは「税金」と「市場」で判断する

売却タイミングは、税金の期限を最優先に考えましょう。特に、売却代金を納税に充てる場合の相続税の申告期限(10か月以内)や、節税効果の高い各種特例(例:相続空き家の特例は相続開始から3年以内など)の適用期限を逃さないことが大切です。その上で、購入希望者が増える春や秋といった市場の動向も考慮に入れると、より良い条件での売却が期待できます。

参考記事:【プロ監修】不動産売却のタイミングとは?市場・税金や控除・相続や生前贈与

適正な相場と売却価格を決める

適正な売却価格を知るには、不動産情報サイトで近隣の相場観を掴むことも参考になります。しかし、自己調査で得られるのはあくまで一般的な相場です。

自身の所有する不動産価値を把握し、より現実的な価格を知るためには、不動産会社に訪問査定を依頼しましょう。

その上で査定額やその根拠、販売戦略をしっかりと説明してくれる信頼できるパートナーを選ぶことが重要です。

売却期間は「相続手続きの時間」も考慮する

不動産の売却活動が始まってから完了するまでは、一般的に3か月~6か月程度かかります。ただし、相続した不動産で最も注意すべき点は、この期間に加えて「相続手続きにかかる時間」が別途必要になることです。相続人の確定、遺産分割協議、相続登記といった準備には数か月以上かかることも珍しくありません。売却を考え始めたら、まずは相続手続きを速やかに進めておくとスムーズです。

【ステップ別】相続した不動産を売却するまでの流れと期間

相続した不動産の売却は、通常の不動産売却に加えて特有の手続きが必要です。

ここでは、売却までの流れをステップごとに解説します。

Step1:相続人の確定と遺産分割協議

①相続人の確定

まず、誰が相続人となるのかを法的に決める必要があります。被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本等を取り寄せ、法定相続人を明らかにします。遺言書がある場合は、原則としてその内容に従います。

②遺産分割協議

相続人が複数いる場合、誰がどの財産をどれだけ相続するのかを話し合う「遺産分割協議」を行います。

不動産を売却して現金で分ける場合は、その旨を全員で合意し、「遺産分割協議書」を作成します。この書類は後の相続登記や売却手続きで必要です。

期間の目安

相続人の数や関係性、遺産の複雑さによりますが、数週間~数か月、場合によっては1年以上かかることもあります。余裕を持ったスケジュールを立て、計画的に進めるようにしましょう。

Step2:相続登記(名義変更)は必須!必要書類と手続き

相続した不動産を売却するには、不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する「相続登記」が必須です。2024年4月1日から相続登記は義務化されており、正当な理由なく怠った場合には過料が科される可能性もあります。

名義変更のために必要な書類には、主に以下の書類が必要になります。

相続での必要書類

  • 登記申請書
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票
  • 遺産分割協議書(相続人全員の実印と印鑑証明書が必要)
  • 遺言書(ある場合)
  • 固定資産評価証明書
  • 委任状(司法書士に依頼する場合)

手続きには管轄の法務局への申請が必要となり、司法書士に依頼するのが一般的です。書類収集から登記完了まで、1か月~3か月程度が目安になります。

相続した不動産を売却する際に必要な書類

不動産売却では、手続きの段階に応じて様々な書類が必要です。
ここでは一般的な必要書類を3つのタイミングに分けてご紹介します。

① 査定・媒介契約時

  • 登記済権利証 または 登記識別情報通知書
  • 固定資産税納税通知書
  • 土地測量図や境界確認書
  • 建物の図面(間取り図、建築確認済証など)

②売買契約時に必要なもの

  • 本人確認書類(運転免許証など)
  • 実印
  • 印鑑証明書(発行3か月以内のもの)
  • 登記済権利証 または 登記識別情報通知書

③ 決済・引き渡し時に必要なもの

  • 登記済権利証 または 登記識別情報通知書
  • 実印と印鑑証明書
  • 住民票(登記上の住所と現住所が異なる場合)
  • 売却代金の振込先口座情報
  • 物件の鍵と関係書類一式

書類の準備に時間がかかることもあるため、何が必要かを事前に把握し、早めに用意しておくと売却の手続きがスムーズに進みます。

参考記事:【プロ監修】不動産売却の必要書類一覧|取得方法や費用まで徹底解説

Step3:不動産会社の選び方と査定依頼のポイント

相続した不動産の売却成功は、パートナーとなる不動産会社選びが鍵を握ります。特に専門知識が求められるため、以下の5つのポイントをチェックしましょう。

①売却エリアに詳しいか

地元の客層や魅力を知る地域密着の不動産会社であれば、物件の価値を引き出しながら有利に売却を進められる可能性があります。

地元のネットワークを活かした買主探しも期待できるため、その土地に根差した情報力があるかどうかも見極めましょう。

②相続不動産の売却実績が豊富か

実績豊富な会社は、節税に繋がる特例の活用法や、相続人同士のトラブル回避策、複雑な法的手続きに関する知識も豊富です。税金の特例や法的手続きに詳しく、的確なアドバイスがもらえる不動産会社を選びましょう。

担当者との相性

売却活動は数か月に及ぶため、担当者との相性は非常に重要です。

報告・連絡がスムーズか、親身に相談に乗ってくれるかなど、査定時のやり取りを通じて信頼できる担当者を見つけることが、後悔しない売却への近道です。

査定価格の根拠が明確か

高すぎる査定額や低すぎる査定額には注意が必要です。周辺の成約事例や市場動向をもとに、査定価格を丁寧に説明してくれる誠実な会社を選びましょう。

販売戦略が具体的か

物件の長所をどうアピールするのか、どのような広告媒体を使うのか、内覧の際にはどんな工夫をするのかなど、具体的で納得感のある販売プランを提示してくれるかどうかも不動産売却では重要なポイントです。

参考記事:【プロ監修】不動産売却|不動産会社の選び方・見極め方のポイント

査定依頼のポイント

  • 物件の状況(築年数、間取り、不具合箇所など)を正確に伝える。
  • 相続物件であること、売却希望時期などを伝える。

遺産分割協議の状況や、相続登記の進捗なども伝えておくとスムーズに進めることができます。

Step4:売買契約の締結と手付金受領

購入希望者が見つかり、価格や条件について合意に至れば、売買契約を締結します。

①売買契約
不動産会社が作成する「売買契約書」の内容をしっかり確認し、署名・捺印します。契約時には、物件の詳細、売買代金、支払い条件、引き渡し時期、契約不適合責任(後述)などが定められます。

②手付金受領
契約時に、買主から売買代金の一部として手付金(一般的に売買価格の5%~10%程度)を受領します。

期間の目安
媒介契約締結から売買契約締結までは、1か月~3か月程度が一般的ですが、物件によってはさらに時間がかかることもあります。

Step5:決済と物件の引き渡し

売買契約で定められた日時に、残代金の受領と物件の引き渡しを行います。

①決済
一般的に買主側の金融機関で行われます。司法書士が立ち会い、所有権移転登記の手続きも同時に行われます。売主は残代金を受領し、鍵や関係書類を買主に引き渡します。固定資産税や都市計画税の日割り精算もこの時に行います。

②物件の引き渡し
契約で定められた状態(例:空き家にして引き渡すなど)で買主に引き渡します。

期間の目安

売買契約を締結してから決済・引き渡しまでの期間は、買主のローン審査などにかかる時間を考慮し、1か月~2か月程度が一般的です。

Step6:売却後の手続き(確定申告)

不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合は、売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行い、所得税・住民税を納める必要があります。

譲渡所得の計算:譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)

特例を利用する場合も確定申告を行う必要があるため注意しましょう。

参考記事:相続不動産を売却したら確定申告は必要?税理士に依頼した場合の費用相場も紹介

相続した不動産の売却で発生する税金

相続した不動産を売却する際には、様々な税金がかかります。しかし、利用できる特例を知っておけば、節税につながる可能性があります。

まずは売却の際に必ず発生する税金について確認しておきましょう。

必ずかかる税金一覧

譲渡所得税・住民税

不動産を売却して得た利益(譲渡所得)に対してかかる税金です。

税率は不動産の所有期間によって異なります。

短期譲渡所得(所有期間5年以下): 所得税30.63%、住民税9%
長期譲渡所得(所有期間5年超): 所得税15.315%、住民税5%

※相続の場合、被相続人の所有期間を引き継ぎます。
復興特別所得税(所得税額の2.1%)を含みます。

印紙税

売買契約書に貼付する印紙代です。契約金額によって税額が異なります。

登録免許税

相続登記や、抵当権が残っている場合の抹消登記にかかる税金です。

消費税

仲介手数料など、不動産会社に支払う報酬には消費税がかかります。
(個人間の不動産売買そのものには原則かかりません)。

相続した不動産を売却する際に使える税金控除と特例

特定の条件を満たすことで、譲渡所得税を大幅に軽減できる特例があります。

【ケース1】親が住んでいた実家を売る場合

被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(空き家特例)

相続または遺贈※により取得した被相続人の建物や敷地を売却し、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。

主な要件(家屋とその敷地の場合)

  • 相続開始直前まで被相続人が一人で住んでいたこと
  • 昭和56年5月31日以前に建築された家屋(旧耐震基準)であること
  • (上記を満たしていなくとも、売却前に耐震リフォームを行うか、家屋を取り壊して更地で売却するなら可能)
  • 相続時から譲渡時まで事業用、貸付用、居住用に使われていないこと
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 売却期限は、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで
  • 親子や夫婦など特別な関係がある人への売却ではないこと

※遺贈…遺言により、財産を法定相続人以外の人間に渡すこと

【ケース2】相続開始から3年10か月以内の売却

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

この特例は、「相続で財産を受け取ったときに相続税を支払った人が、その財産を一定期間内に売却した場合、支払った相続税の一部を不動産の購入費用(取得費)に上乗せできる」という制度です。

取得費が大きくなると、計算上の利益(譲渡所得)が少なくなり、結果として支払うべき所得税や住民税を安くすることができます。

ここでは特例を利用する際の主な要件をご紹介します。

  • 相続や遺贈により財産を取得した人であること。
  • その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
  • その財産を、相続開始のあった日の翌日から3年10か月以内(相続税の申告期限の翌日から3年以内)に売却していること。

上記【ケース1】の「空き家特例」が代表的です。適用要件をよく確認しましょう。

参考記事:3年以内に相続不動産を売却すると税金が安くなる?利用できる特例 も紹介

相続した不動産の売却で失敗しないための注意点

相続不動産の売却は、思わぬ落とし穴があることも。事前に注意点と対策を理解しておくことで、トラブルを未然に防ぎましょう。

共有名義の不動産売却には全員の同意が必要

遺産分割協議の結果、不動産を複数の相続人の共有名義にすることがあります。

共有名義の不動産を売却するには、共有者全員の同意が必要です。

売却価格、時期、不動産会社の選定、売却代金の分配方法など、全ての事項について共有者全員で話し合い、合意形成を徹底しましょう。

意見がまとまらない場合は、弁護士などの専門家に相談し、客観的なアドバイスをもらうのも有効です。

窓口となる代表者を一人決め、連絡や手続きを一本化するとスムーズに進みます。重要な決定は都度必ず全員に確認しましょう。

契約不適合責任を理解しておく

売却した不動産に、契約内容と異なる欠陥(雨漏りやシロアリなど)が見つかった場合、売主は修補や代金減額、損害賠償などの責任を負う可能性があります。特に築年数の古い物件では注意が必要です。対策として、インスペクション(建物状況調査)の実施や、買主との合意の上で責任範囲を明確にする特約を設けることなどが考えられます。

ウスイホームのインスペクション(建物状況調査)

節税特例を利用するなら「3年以内」「3年10か月以内」の期限に注意

不動産の売却で節税のために特例を利用する場合、「3年以内」と「3年10か月以内」の2つの期限に注意が必要です。これまでにご紹介した2つの特例と期限を改めて振り返っておきましょう。

1.【期限:3年後の年末まで】空き家の3,000万円特別控除

一定の要件を満たす実家などを売却した場合、最高3,000万円の利益が非課税になる特例です。

2.【期限:3年10か月以内】取得費加算の特例

相続時に支払った相続税の一部を、売却時の経費(取得費)に上乗せできる特例です。
これにより、計算上の利益が減り、税金が安くなります。

どの特例が利用可能で、どう活用するのが最も有利かは状況によって異なります。

後悔しないためにも、相続が発生したらできるだけ早く税理士や不動産会社などの専門家へ相談し、計画的に準備を進めることが不可欠です。

特例によっては併用できないものもある

特例によっては併用できないものがあります。
例えば、「空き家特例」と「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」は、重複適用が可能です。ただし、他の居住用財産の特例(例:マイホームを売ったときの3,000万円特別控除)との併用には制限がある場合があります。
どの特例を適用するのが最も有利か、税理士に相談してシミュレーションしてもらいましょう。

取得費が不明の場合は譲渡所得税が高額になる可能性も

取得費は、 土地の場合、買い入れたときの購入代金や購入手数料などの合計額です。
建物の場合は、購入代金などの合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた額です。

この取得費が不明な場合、売却価格の5%を概算取得費として計上する方法があります。しかし、これでは譲渡所得税が非常に高額になってしまう可能性があります。

可能な限り、取得費が分かる以下のような資料を探しましょう。

【最優先で探すべき】直接的な証拠となる資料

  • 売買契約書、工事請負契約書
  • 売買代金の領収書
  • 購入時の仲介手数料の領収書
  • 登記費用の領収書や請求書
  • 不動産取得税の納税通知書
  • 住宅ローン契約書(金銭消費貸借契約書)や返済予定表
  • 購入時の重要事項説明書

【諦める前に】間接的な証拠・推計の根拠となる資料

直接的な資料がない場合でも、以下の書類を組み合わせることで、購入価格を合理的に推計できる可能性があります。

  • 購入当時のパンフレットやチラシ
  • 預金通帳の履歴や振込記録
  • 住宅ローン控除を受けた際の確定申告書の控え
  • 登記簿謄本(登記事項証明書)
  • 火災保険の保険証券 

【ケース別】相続した不動産の売却戦略

相続した不動産の売却には、様々なケースに応じた悩みや課題がつきものです。
ここでは代表的なケースとその解決策をご紹介します。

築年数が古い不動産の売却ポイント

築年数が古い不動産の売却戦略は、主に3つの方法から選択します。

①現状のまま売る

費用や手間をかけず現状のまま売る方法です。

手軽ですが価格は安くなる傾向にあり、建物の欠陥に関するトラブル対策が必要になります。

②リフォームして売る

費用をかけてリフォームすれば高く売れる可能性がありますが、投資した費用を回収できないリスクもあります。

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③解体して更地で売る

建物の状態が悪ければ解体して更地で売る選択肢もあります。

ただし、解体費用と固定資産税が増える負担を考慮しなければなりません。

参考記事:【プロ監修】戸建ての解体費用とは?費用・期間・注意点を解説

遠方の不動産を相続した場合の売却ポイント

現地に足を運ぶのが難しい場合、売却活動を信頼して任せられる不動産会社選びがより重要になります。

オンラインでの面談や報告体制が整っている会社を選びましょう。地元の情報に詳しい不動産会社が有利な場合もあります。

また売却までの間、空き家の管理(定期的な換気、清掃、庭の手入れなど)が必要です。

管理サービスを利用したり、近隣の親族に依頼したりすることを検討しましょう。

放置すると資産価値の低下や近隣トラブルの原因になります。

参考記事:ウスイホームの+Uリモート相談(来店せずに面談・相談・物件見学・重要事項説明・契約)

借地権付き不動産の売却ポイント

借地権付き建物を売却する際は、まず地主の譲渡承諾を得ることが条件です。

その際、譲渡承諾料が必要となる場合が多く、地代や更新料といった借地契約の内容も売却価格や買主探しに大きく影響します。

売却価格は所有権物件より低めになり、住宅ローン審査も厳しくなる傾向があります。

専門の不動産会社と連携し、地主と良好な関係を保ちながら進めることが重要です。

なお、どうしても地主の承諾が得られないときは、地主に代わって裁判所に許可を求めることができます。

底地(貸宅地)の売却ポイント

底地(貸宅地)の売却では、土地の自由な利用ができず、収益が地代に限られるという点を理解しておく必要があります。

最も有力な買主は借地人であり、まずは借地人に購入を打診するのが一般的です。第三者への売却も可能ですが、その場合は売却価格が大幅に低くなる傾向があります。

いずれのケースも、まずは不動産会社に相談し、物件の特性や市場の状況を踏まえた上で、最適な売却戦略を検討することが大切です。

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不動産の売却でお悩みなら、実績豊富なウスイホームにご相談ください。

1976年の創業以来、横須賀・湘南・横浜エリアを中心に、地域密着型のサービスを提供し、多くのお客様の不動産売却をサポートしてきました。

相続・借地権・底地に関する専門の相談窓口を設けており、不動産コンサルタント、弁護士や公認会計士等からなるプロフェッショナルチームが、不動産相続や売却に関するお悩みを全て解決いたします。

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後悔しない不動産売却のために

相続した不動産の売却は、法的な手続きや税金の知識、そして何よりも相続人間の円満な合意形成が不可欠です。手続きが複雑で時間もかかるため、早めに専門家(司法書士、税理士、不動産会社など)に相談し、計画的に進めることが成功の鍵となります。

本記事で解説したステップや注意点、節税特例などを参考に、後悔のないスムーズな不動産売却を実現してください。放置することで生じるリスクを回避し、大切な資産を次の世代や新たな活用へと繋げていきましょう。

監修者 海沼 仁(カイヌマ ヒロシ)
ウスイホーム株式会社 代表取締役社長

【経歴】
大学時代は不動産評価論を専攻。
卒業後、1997年にウスイホーム株式会社入社。売買仲介部門の新人賞を受賞。
2001年、新店の上大岡店店長に就任。以降、各店店長を歴任。特に新店舗の立ち上げを得意とし、後にエリアマネージャーに抜擢される。
2012年より取締役に就任。主に横浜、湘南エリアでの商圏拡大に尽力している。
2021年には創業45周年を機に、SDGs推進に取り組む「ウスイグループSDGs宣言」を制定。地域貢献活動にも力を入れている。
2025年4月、ウスイホーム株式会社代表取締役社長に就任。

地域密着型営業で築き上げてきた不動産業界のキャリアと実績から、顧客の信頼も厚く、幅広い人脈を持つ。著名人・有名人からの相談や紹介も多い。

【資格】
宅地建物取引士
CPM(米国不動産経営管理士)
日本RSP協会 不動産仲介士 試験問題監修委員
執筆者 ウスイホーム株式会社 広報チーム
1976年に神奈川県で創業。お客様と地域の発展のため、横浜・湘南・横須賀エリアで不動産売却のお手伝いをさせて頂いております。長年にわたり蓄積してきた知見を活かし、不動産売却を検討する際に役立つ情報を発信しています。
お問い合わせURL https://www.usui-home.com/contact