不動産を相続したとき、どのように不動産を相続し、相続人の間で分割していくのか、難しい選択に迫られることがあります。
本記事ではプロ監修のもと、不動産を相続した時に知っておきたい、不動産相続から売却までの流れを追いながら、ポイントを解説していきます。
相続で起こりがちなトラブルを回避するために、必要な基礎知識を身に着け、相続を上手に進めていきましょう。
監修者 海沼 仁(カイヌマ ヒロシ) 【経歴】 ウスイホーム株式会社 取締役。 大学時代は不動産評価論を専攻。 卒業後、1997年にウスイホーム株式会社入社。売買仲介部門の新人賞を受賞。 2001年、新店の上大岡店店長に就任。以降、各店店長を歴任。特に新店舗の立ち上げを得意とし、後にエリアマネージャーに抜擢される。 2012年より取締役に就任。主に横浜、湘南エリアでの商圏拡大に尽力している。 地域貢献活動にも力を入れ、2021年には創業45周年を機に、SDGs推進に取り組む「ウスイグループSDGs宣言」を制定。 地域密着型営業で築き上げてきた不動産業界のキャリアと実績から、顧客の信頼も厚く、幅広い人脈を持つ。著名人・有名人からの相談や紹介も多い。 【資格】 宅地建物取引士 CPM(米国不動産経営管理士) 日本RSP協会 不動産仲介士 試験問題監修委員 |
不動産相続|売却に関する期限やタイミング
はじめにお伝えしたいのは、相続と不動産売却には注意すべき期限があるという点です。期限を過ぎると、負担額が増えたりペナルティのようなものが課されるため、相続時には「期限」に注意が必要です。代表的な例は以下の通りです(2024年7月時点)。
●被相続人の死亡から10カ月以内に相続税を申告と納付 期限を過ぎると、延滞税の加算や控除や特例を利用できないなどのペナルティが課される ●固定資産税は、1月1日時点での所有者に請求される もし、相続した不動産を更地にして年をまたぐと住宅特例が適用されず、固定資産税が高くなる ●売却時の不動産登記は必須。相続しなくても3年以内に 売却を行う場合は売却前に「相続登記」が必須。売却しない場合でも、不動産の相続登記は3年以内に済ませるのが義務付けられている ●3年以内に売却した場合、譲渡所得の税額を軽減できる可能性 相続した不動産を3年以内に売却した場合は、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算できるため譲渡所得の税額を軽減できる ●売買成立の翌年は確定申告 「売却で譲渡所得が発生」した場合、売買が成立した翌年の確定申告と納税を行う必要がある。 |
これらの時期を意識した上で、不動産相続に関する流れについて、一緒に見ていきましょう。
参考:
No.4205 相続税の申告と納税 国税庁
固定資産税・都市計画税について 横浜市/藤沢市/横須賀市
相続登記・遺贈の登記の申請をされる相続人の方へ(登記手続ハンドブック)法務局
No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 国税庁
不動産相続|相続の主な種類・ポイント・注意点
不動産を相続する方法として、主に、遺産分割協議・法定相続・遺言書(※)がありますが、ここでは複数の相続人が協議を行って不動産相続について決める「遺産分割協議」について解説します。
遺産分割協議で相続財産を分ける方法には、現物分割・換価分割・代償分割・共有分割があり、それぞれの方法には特有の注意点があります。また、不動産の相続登記には、相続人全員の同意が必要です。相続が発生したら、戸籍謄本などで相続人を確認し、合わせて相続財産の確認も行う必要があるでしょう。
※法定相続とは、亡くなった夫の妻など民法に従った相続人の範囲や法定相続分に従った形で相続する方法を指します。遺言書とは、亡くなった人の意思に従った形で相続人や相続分を決めていく方法を指します。
参考:
公証事務 3遺産分割協議 日本公証人連合会議議
No.4132 相続人の範囲と法定相続分 国税庁
No.4202 相続税の申告のために必要な準備 国税庁
知っておきたい遺言書のこと。無効にならないための書き方、残し方 政府広報オンライン
現物分割
現物分割は、相続財産をそのままの形で分割する方法です。
たとえば、相続人Aが不動産を、相続人Bが車と預貯金を、相続人Cが証券を受け取るように、各相続人が財産をそのままの形で引き継ぎます。
手続きがシンプルである反面、相続するものの価値が異なるため、不均衡が生じやすい点に注意が必要です。
換価分割
換価分割は、不動産など分割が難しい財産を売却し、その代金を相続人で分ける方法です。
この方法は相続人の間で公平に分けられるメリットがあります。しかし、売却に時間がかかることや、予想価格よりも安く売れてしまうリスクもあります。また、登記や売買の費用がかかり、譲渡所得が発生する可能性もあるため、事前にこれらの点を確認することが大切です。
代償分割
代償分割は、分割が難しい財産を一人が相続し、他の相続人にはその相続分を現金で補償する方法です。
たとえば、相続人Aが不動産を相続し、相続人BとCに相続分の対価を現金で支払うといったケースがこれにあたります。相続した不動産に住み続けたい場合や、不動産を手放したくない場合に考えられますが、補償のための現金が必要で、支払う対価は相続人間での合意が必要となります。
共有分割
共有分割は、相続人全員で相続財産を共有する方法です。
不動産を売却せずに複数人で相続する場合に、共有名義にします。一見公平に思えますが、管理や使用、売却について意見が分かれることが多く、将来もめる原因となることがあります。また、次の世代が相続する際には権利関係が複雑になり、不動産に関する手続きがスムーズにできなくなるリスクも否定できません。
不動産相続|売却までの流れと注意点
ここからは、不動産相続から売却までの主な流れを解説します。
※2024年7月時点の内容です。相続した不動産の条件、自治体の制度によっても変わってくる可能性があるため、一つの目安として参考にしましょう。
①相続人で協議
まず、遺言書の有無を確認し、遺言書がある場合は、基本的には遺言書が優先されます。
遺言書がないなどで遺産分割協議を行う場合は、相続人を確認し全員で協議を行う必要があります。相続財産の分割方法を協議し決定しますが、この段階で相続税が発生するかどうかも確認しておきましょう。相続税は、相続した人が支払う義務があります。
②相続人が登記して売却の準備
相続人が登記をして売却の準備を進めます。
亡くなった被相続人名義では売買できないため、すぐに売却する場合でも、名義変更は行わなくてはなりません。
換価分割の場合は、代表者の名義にして、売買後に代金を分割する方法が一般的に取られています。換価分割をするため遺産を引き継ぐことを、遺産分割協議書に明記しておきましょう。
この段階から、不動産会社に相談してサポートを受けると良いでしょう。
③不動産会社へ売却の相談
不動産会社に正式に売却を依頼し、売却の手続きを開始します。
戸建て売却のためには、登記簿謄本や土地測量図・境界確認書など多くの書類を揃える必要があります。不動産会社のプロのアドバイスを受けながら、書類を揃え必要な手続きを進めていきましょう。
④買主決定・契約・引き渡し
買主が決まったら、売買契約書を作成し契約の締結と決済を行い、不動産を引き渡して売却手続きが完了します。
⑤相続税の申告と納付
売買が完了したら、相続税の申告と納付を行います。
申告は、被相続人の死亡から10カ月以内に完了させなくてはなりません。市場で売却するのに時間がかかる場合は、不動産会社に売却するという方法もあります。価格は安くなりますが、短期間で決済まで行え、速やかに売却をしたい場合は検討すると良いでしょう。
⑥譲渡所得があるなら確定申告
譲渡所得(売買益)が発生した場合は、翌年に確定申告が必要です。
誰がどのように、譲渡所得税を納付するかも相続人の間で話し合っておきましょう。
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【プロ監修】不動産の相続時に知っておきたいポイント|藤沢編
不動産相続|売却する・しない?メリット・デメリット
実家を相続しても住む人がいない場合、売却が得策です。売却を検討する際の価格の調べ方や、売却と維持のメリット・デメリットを解説します。
売却するメリット・デメリット
相続した不動産を売却する場合のメリットとデメリットを紹介します。
<メリット>
不動産を売却し現金化することで、複数人で相続する際に分配がスムーズに行えるというメリットがあります。相続した現金を、貯蓄や今後の生活費に充てられます。将来の資金計画に役立てたいときにも有効といえるでしょう。
また、相続した家を維持管理するためには、手間と費用、固定資産税などの税金がかかりますが、売却によりこれらの負担がなくなります。
<デメリット>
家の売却の決心がつかないケースでは、家への思いが深く喪失感を抱くためであることが多いものです。売却したくない相続人がいる場合には、もめる可能性も出てきます。
実家に思い入れがある場合は、家を写真に撮ったり、家財を片付けて大切なものを手元に持ち帰り保管したりすることで、気持ちがやわらぐこともあります。人が住まない家は傷みが早いため、良い状態で次に住む人に譲れば、家を活かすことができると考えてみましょう。
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売却しないメリット・デメリット
相続した不動産を売却せずに維持することにも、メリットとデメリットがあります。
<メリット>
将来的に、相続した家に住む選択肢が残されます。また、リフォームすれば、週末や長期休暇に別荘として利用することも可能でしょう。賃貸として活用すれば、賃料収入を得られる可能性があります。
<デメリット>
空き家といえど維持するためには、修繕や雑草対策に費用と手間がかかり、固定資産税や火災保険料などの費用も発生します。万が一、荒れて特定空き家に指定されると税金が6倍になる可能性がある点にも注意が必要です。
更地にした場合は、固定資産税における住宅用地の特例がなくなるため、翌年からの固定資産税が高くなるのが一般的です。
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不動産相続|売却に必要な書類・税制に関する主なポイント
ここでは、遺産分割協議で相続した不動産の名義変更(登記)に必要な書類や税制の主なポイントを紹介します。
法定相続の場合は自分で申請も可能ですが、書類が多く煩雑なこともあるため、不動産会社や司法書士に依頼するのが一般的です。その点も念頭に置いた上で、見ていきましょう。
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※2024年7月時点の内容です。対象となる税の種類は個人や不動産の条件などによって異なります。また、税制や税率、制度や条例は都度改正されるため、あくまで参考とし、最新かつ自分にとって必要な情報を確認しましょう。
相続した不動産の名義変更(登記)に必要な書類
相続した不動産の名義変更(登記)に必要な書類を主な4つのステップに分けて紹介します。
①相続人を被相続人の戸籍謄抄本、除籍謄抄本で確認 |
②遺産分割協議・協議書の作成⇒相続財産の分割の仕方を協議し書面にする |
③登記申請書の作成⇒法務局ホームページでダウンロードできる 【登記申請書に添付する書面】 被相続人の戸籍謄抄本、除籍謄抄本 遺産分割協議の当事者の相続人全員の戸籍謄抄本 相続人全員の印鑑証明(遺産分割協議書に押印した実印のもの)と住民票の写し 相続関係説明図(提出した書面の原本の還付を希望する場合のみ) |
④代理人が申請する場合は権限を証する情報(代理権限証明情報)の作成・添付 |
参考:登記申請手続のご案内 (相続登記①/遺産分割協議編) 法務省民事局
不動産売却に必要な書類
不動産といってもさまざまな種類がありますが、ここでは、一戸建てを売却するケースを例に、どのような書類が必要なのかを見ていきましょう。
・登記済証(権利証)または登記識別情報 ・本人確認書類 ・物件の間取り図(更地の場合は不要) ・確認申請書、確認済証、検査済証・固定資産税、都市計画税納税通知書の写し ・実印 と印鑑証明書 ・固定資産評価証明書 ・住民票 ・土地測量図 ・境界確認書 ・抵当権抹消書類 ・売却物件の購入時の売買契約書 上記以外に、下記の書類が必要な場合がある。 ・抵当権抹消書類(住宅ローンが残っている物件を売却する場合) ・耐震診断報告書(1981年以前築)、アスベスト使用調査報告書(1975年以前築) ・確定申告書で必要になる書類(確定申告書・・売却不動産の購入時と売却時の契約書のコピー、仲介手数料、印紙税の領収書) |
このように多くの専門的な書類が必要になるため、不動産会社に相談しながら、早めに準備するのがおすすめです。
3,000万円の税金特例の適用条件
相続した家を売却したときに譲渡所得に適用される3,000万円の控除ができる税金特例があります。一定の要件を満たした場合が対象となり、主な適用条件には以下があります。
・平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売却 ・昭和56年5月31日以前に建築された建物である ・区分所有建物(マンションなど)登記がされていない ・相続の開始の直前に被相続人以外の人が居住していなかった その他に、耐震リフォームや、相続開始から3年などの細かい要件があるため、確認要 |
古い家は取得額がわからないことも多く、譲渡所得が多くなるケースもあります。この特例を利用することで税の負担を減らせるでしょう。
譲渡所得(売買益)の計算 購入額は親が購入した価格
相続や贈与で取得した土地や建物を売却した際に、所得(利益)が出た場合は確定申告が必要です。
譲渡所得は売買額から取得費と売却にかかった費用を差し引いて算出し、取得額は親が購入した価格となります。もし、相続した家の取得費が不明な場合は、売却金額の5%を取得費として計算します。
例)不動産を3,000万円で売却し、取得費が不明な場合は、5%相当の150万円が取得費となる
参考:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁
No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき 国税庁
不動産相続はプロのサポートを
不動産を相続する際の注意点と、主に売却する際のポイントや必要書類について紹介しました。
不動産の相続にはさまざまな期限や必要な書類があるため、早い段階で、信頼できる不動産会社に相談し段取りをスケジュールしながら協議を進めていくことをおすすめします。
後悔のない不動産相続になるよう、できるところから準備をはじめましょう。
執筆者 ウスイホーム株式会社 広報チーム 1976年に神奈川県で創業。お客様と地域の発展のため、住宅に係わるあらゆるお手伝いをさせて頂いております。長年にわたり蓄積してきた知見を活かし、新築戸建てや中古戸建てを検討・購入する際に役立つ最新情報を発信しています。 お問い合わせURL https://www.usui-home.com/contact |